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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(13) 欧州農業 大規模、六次化実現

 これまで六次化や農作物のブランド力向上などを取り上げてきましたが、数回ほど海外を見て思ったことをご紹介したいと思います。
 職業柄、どうしてもまとまって二週間近く海外調査をしようとすると春休み期間の二、三月になるのですが、昨年、今年とスペイン、フランスなどへ行く機会がありました。研究専攻が農学ではないので、主たる調査は金融関係の法体系部分が中心なのですが、JAにもご協力をお願いして、必ず現地の農業関係の視察やインタビューなどもしています。その中でこの数年、欧州農業の現実に触れてみると、わが国の掲げる農産物輸出論を全否定こそしないものの、なかなか厳しいという印象を持たざるを得ません。
 三月、スペイン・フランス国境のピレネー山脈の麓では、一面のアンズの花が咲き乱れます。アンズ畑なのですが、その規模がとにかく大きいのです。福島市内も四月は花々で覆われますが、あちらは電車の車窓からどこを見てもピンク色の花ばかり。また、できた果実も多少の傷はお構いなく集荷センターに集めて、大半は機械を使って加工し製品化するそうです。これまでどのようなものが売れてきたのか徹底的な分析を行い、生産する品種の絞り込みを行い、大量に生産して製品化し、コストも抑えた上で価格競争できる体制を整え、マーケットシェアも稼いでしまう戦法です。
 なので、スペインもフランスも「見渡す限りの〇△畑」という風景を車窓からよく見ます。わが国がなかなかできていない大規模化や六次化をある意味さっさと実現し、農業が「産業化」していることを感じました。半面、生食向けに作られているものは少なくて、スーパーに行っても甘味のあるおいしい果実にお目にかかることはほとんどありません。かくして、欧州出張では、いつも甘味ならぬ酸味たっぷりのイチゴや甘味がないリンゴを食べながらの旅となってしまいます。ちなみに、案外一般には知られていませんが、徹底的な生産品種の絞り込みを反映して、フランスなどでは日本のような地域別の総合農協ではなく、生産する品種別の組合がむしろ主流となっているようです。
 また、現地農業関係者も最初聞いてくるのが「そちらではどんなものやどんな味が人気があるのか」で、日本の地域の農業関係者の会話とはだいぶ違う印象を持ちました。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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