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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(14) 欧州農業 ICTの活用に驚き

 前回は部分的ではありますが、大規模化ならびに加工の推進などを通じた「産業化」された欧州の農業について書かせていただきました。
 ずいぶんと進歩しているんだなあという印象を持たれたかもしれませんが、わが国同様、農業人口の下落傾向は変わらない中、激しい市場間競争の中で労働集約型の部分は相当数、外国人労働者に依拠していることも事実です。ただ、農業の現場にいる人たちが原材料としての農作物を作っているだけではありません。加工後の最終製品について、欧州全体や世界をマーケットとして考えながら、加工・流通業者とも交渉を重ねながら生産しています。この点は、農家やJAの及ぶ範囲が生産したところまで限定的になりがちなわが国の状況からすると大分違っています。
 前回の終わりにも少し触れたように、生産現場で市場の情報に敏感に反応する生産者がいて、最近の有機や無農薬等、さまざまな消費者や流通業者からの声にも適宜対応しようとする「ビジネスとしての農業」がそこにはあります。また、そこではICT(情報通信技術)が広く活用されており、農家の中にはインターネット等で他の産地の様子を知るための衛星写真や先物市場の様子を確認している人までいることに驚きました。
 しかし、このモデルをそのまま福島に持ってきてよいかというと、それにはいくつかの疑問がないわけではありません。まず、規模の問題がありますが、それ以上に日本はやはり多品目生産型の農家が多く、欧州や米国などは単品目生産型が多いことが挙げられます。確かに、大量生産はできないものの、品目を分散することでリスク分散にはなっています。また、JA等によるきめ細かい営農指導や集荷・選果により、高いレベルの農産物の生産に成功していることも挙げられます。
 ただ、営農組織の規模・機能などは検討されてもよいかもしれません。スペインなどでは、組合が多目的組合で、組合自体が大きな持ち株会社となり、その下に流通や製造業、自社ファームを通じた農業生産を行って、まさにグループ内で風上から風下までが一つのグループで完結している場合もあります。目的別組合にJAが法律上なっている以上、どこまでやれるのかという微妙な問題になりますが、部分的には参考にできるモデルとも言えるでしょう。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)=次回は8月8日掲載

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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