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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(15) 福島の農業 海外貢献 生産技術をアジアへ

 前回まで欧州の産業化された農業の世界をご紹介してきました。わが国も農産物の海外輸出を強く推し進め、行政やJA組織などの努力もあり、県内では、福島の桃のようにある程度の輸出に成功している事例も見られるようになってきました。しかし、このような成功例に水をさすつもりはないのですが、輸出先や他の農産物産地の声や実態を聞くと実情はなかなか複雑です。

 毎年のようにアジア諸国に出掛け、流通産業の方たちの声を伺う機会がありますが、日本へのアジアからの旅行客急増で、東南アジア諸国などでは空前の日本食ブームが起きています。その中で、日本の農産物(特に果実)も注目はされているのですが、なにせ暑いところへの輸出になることもあり、流通の過程でかなり質が劣化し、あまり語られていませんが、かなりの廃棄率になっています。

 また、やはり値段が高いことも現地では問題になっています。欧米への輸出も考えられますが、日本酒のように保存が利けば別ですが、十数時間もかけて空輸するためのコストを考えると、現地の店頭に置けるものではないし、安価な加工品に慣れた現地の消費者にはなかなか理解されないでしょう。

 そんな中、わが国の農産物輸出はなぜここまでに現物輸出メインで進めようとするのかその理由はよくわかりませんが、欧州の現物輸出の限界を割り切った加工物生産と輸出、保存期間を生かした出荷計画の作り方などは何歩か先を行っているようにも見受けられます。しかし、以前にも加工施設の問題は少し取り上げましたが、売り先確保や物流などの整備も伴うことですから、同じことがすぐにわが国でできるわけではありません。

 しかし、福島の農業ができる「輸出」もあります。それは農業生産技術の輸出です。震災後の風評被害もあって県内産野菜は以前ほどはありませんが、もともと首都圏にとって、福島は重要な農作物(特に野菜等)の産地でした。これらの農作物の生産技術を人口増加の著しい、アジア諸国にもっていき、現地の生産能力を上げ、場合によってはそれを知財として現地から技術料等の形で徴収するというのも一つの考えかたではないでしょうか?。

 実はその試みはすでにスタートしています。次回はそれを紹介し、その課題を検討していきたいと思います。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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