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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(17) 農業技術の輸出 知財の考え方の確立を

 福島の農業技術をインドネシアに出していく中で、その作物の中にリンゴが含まれていることを聞くと、東北や信州のリンゴ農家の中には過去の苦い記憶を思い出す人もいるでしょう。中国への技術提供も日中友好の旗印の下で進められ、その結果、現地でのリンゴ栽培技術が急速に向上し、人件費を中心に栽培コストが安い中国産のフジリンゴに東南アジア市場を奪われるということになりました。今も、バンコクやジャカルタのスーパーでは、中国産やニュージーランド産などが幅を利かせている状況です。これでは単なる技術流出になり、メリットどころかデメリットになります。

 今回の福島からの技術輸出が同じ轍(てつ)を踏まないために、銀嶺食品やJAふくしま未来を中心としたプロジェクトチームではさまざまな案を検討しています。まず、技術は知的財産であること、質の高い農作物であるというブランドを生み出す源であることを認識してもらうため、また、出した技術に対して一定のライセンス料の確保が可能になるように、現地での特許や商標登録の出願を現地の法律事務所と組んで検討しているところです。

 当然、生産物が一定のクオリティーを保っているかどうかを確認するという意味でも、一度、技術を提供したらそれで終わりではなく、その後の継続的なモニタリング指導が必要であると考えており、技術者の定期的な訪問や常駐の必要性も検討しています。

 また、商品のコピーや技術の流出が往々にして、商品の流通過程から発生することから、当初の間は、信頼できる生産者のセレクションをしたうえで、日系スーパーなど信頼できる流通業者向けのみに販売していくということも検討・交渉しています。

 このような動きはインドネシアの農業にとっても、これまでとは違った発展を目指していくうえでよい実例になると考えています。一九六〇年代からのいわゆる「緑の革命」などを経て、国民が食べていくための量をどのように生産するかにこれまでのインドネシアの農業政策はその重点を向けてきました。経済の発展とともに、その部分はほぼ満たされてきており、今後は、食についてもクオリティーを意識する中間所得者層以上の層へ向けて、より高い質の農作物を提供していくことが求められているからです。

 次回はこのプロジェクトの福島にとっての真の意味を解説したいと思います。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)=次回は19日掲載

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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