『おみやげ防災』は
各地の災害時に得られた防災知見を全国に発信するべく、
被災地を一番近くで取材してきた地元新聞社が集めた
防災知見が詰まった記事で構成されたおみやげ袋を配布し、
全国に広げる取り組みです。

掲載記事

おみやげ袋に掲載されている防災記事は、こちらよりご覧いただけます。
ぜひ災害対策にご活用いただけますと幸いです。

Article 01

福島民報 防災・減災キャンペーンいのちを守るために
〜住民の声から〜
【伊達市梁川町】台風19号その時、私は伊達市梁川町 イチゴ農家
木村耕二さん(69)情報集め深夜に避難

台風被害で出た土砂の運び込みなど自宅の片付けを進める木村さん。多くの住宅が水没した伊達市梁川町の中心部=10月13日午前10時ごろ

台風19号で氾濫した阿武隈川の支流・塩野川から約五十メートル離れた場所に住んでいる。木造二階建ての自宅は浸水被害を受け、二メートルを超える高さまで水が入り込んできた。自宅隣にある小屋は全てが水に漬かった。

台風が梁川町に接近してきた十月十二日午後から、妻と一緒にテレビや携帯電話のニュースを見て雨や河川の状況を確認していた。ただ、心のどこかで「被害はないだろう」という過信があった。

ニュースを見ていて感じたのは、大ざっぱな情報しか得られないということだ。妻とも話したが、河川の水位が上昇、何百ミリの大雨などの情報を目にしても、危険性を身をもって感じられない。河川であれば地元の消防団などがサイレンを鳴らし、「あと何センチ程度で決壊の恐れがある」など具体的な情報を発信してほしいと思う。

妻と避難を開始したのは十三日午前一時半ごろ。親戚から、一九八六(昭和六十一)年の「8・5水害」に迫る被害が出るかもしれないと聞いて避難を決断した。玄関を開けると水が膝上まで迫ってきた。長靴や雨具を身に着け、避難所に指定されている近くの体育館まで歩いて向かった。

台風から一カ月が経過したが、家の片付けはまだまだ終わらない。イチゴ農家を営んでいるが、ハウスは自宅から離れた場所にあるため苗は無事だった。家の土砂のかき出しは本当に大変だが、親戚が手伝ってくれて本当に感謝している。家財などは失ったが、人の温かさは強く感じた。

昔に比べ、雨量は明らかに多くなっている。災害はいつどこで起こるか分からない。今回の台風を経験し、備えの大切さを改めて実感した。

掲載日:2019.11.20

Article 02

福島民報 防災・減災キャンペーンいのちを守るために
〜住民の声から〜
【郡山】台風19号その時、私は郡山市田村町 日大工学部2年
茂木佑一さん(20)判断遅れ2階に避難

台風19号が通過した翌朝に「はまつ下宿」2階から撮影された郡山市田村町の住宅街の様子=10月13日午前5時ごろ(茂木佑一さん提供)

郡山市田村町の日大工学部キャンパス周辺は、台風19号による阿武隈川の氾濫で、学生が暮らす数多くのアパートが浸水した。私が住む二階建ての「はまつ下宿」は、大学生と高校生合わせて十人が一階と二階の部屋に分かれて暮らし、一階に共用の台所や居間がある。私の部屋は二階だった。一階部分が床上一メートルほどまで水に漬かった。気が付いたら一階に水があふれていて、逃げたくても逃げられなかった。危機感が足りなかったと感じている。

群馬県安中市出身で、大学進学で郡山市に引っ越した。台風19号が郡山市に接近した十月十二日は下宿にいた。大雨や河川の状況は、スマホを通じてツイッターやLINE(ライン)で見られるニュースや友人とのやりとりで知っていた。阿武隈川のすぐそばのアパートに住む友人からLINEを通じて、増水した川の写真と「氾濫しそう。逃げた方がいい」とのコメントが送られてきた。危険が迫っていると感じ、背筋が凍るような思いがした。

郡山市がスマホに配信したエリアメールには、避難所が示されていた。しかし、土地勘がなく、避難所まで無事にたどり着けるか想像できなかった。外に出るのは危ないと判断し屋内にとどまると、十二日深夜、下宿一階に水が入ってきた。膝まで水に漬かる中、家具などを二階に運び、大雨がやむのを待った。

一九八六(昭和六十一)年の「8・5水害」は友人との雑談で耳にした程度で、当時の浸水状況などはよく知らなかった。もっと早く避難の判断をするためには、自分が住んでいる地域がどんな場所なのか、普段から知っておくことが大事だと感じた。

掲載日:2019.11.13

Article 03

ゴンちゃん特別動画を公開福島民報 防災・減災キャンペーン ゴンちゃん一家、避難する
〜津波てんでんこ~

津波から命を守る教訓として三陸地方に伝わる言葉「津波てんでんこ」を知ってもらおうと、福島民報社は動画を作成し、インターネット上に公開した。

「津波てんでんこ」は、自らの判断で、てんでばらばらに津波から避難する大切さを伝えている。言葉が根付いている岩手県釜石市では、東日本大震災の津波の際、学校にいた児童生徒が避難して、一人も犠牲にならず「釜石の奇跡」と言われた。

動画には、十一月五日の「世界津波の日」に合わせて本紙で掲載した特別版四コマ漫画「ゴンちゃん一家、避難する」を映像化した。津波からの避難を促す防災無線を聞いた漫画のキャラクターたちが、新聞紙面上を走り、マンションや歩道橋、高台にそれぞれ避難する様子を描いた。

福島民報社が取り組む防災・減災キャンペーンの一環。作者かまちよしろうさんが本紙の特別企画に共感し、漫画と合わせて、動画版のイラストを書き下ろした。

掲載日:2019.12.29

Article 04

論説災害に向き合う
文化を育て、広める

台風19号や大雨への対応を振り返る県や市町村の検証が始まった。これまでも災害のたびに課題や教訓が指摘され、行政や県民は対策を強めてきたが、被害を十分には防げなかった。

気候変動の影響によって台風や大雨が繰り返し発生したり、激しさの度合いが増したりする状況を多くの人が懸念する。今回の反省を踏まえて、行政、企業、県民が災害への向き合い方を改める取り組みにつなげるべきだ。

県は専門家を交えた検証委員会を年明けに設置し、住宅が被災した県民約一万人を想定したアンケートを二月から三月に実施する。質問項目には「どんな情報(きっかけ)で避難を決断したか」「事前にハザードマップを見ていたか」などを予定する。雨量が増える来年六月ごろまでにアンケートを取りまとめるとともに、委員会からの提言を八月ごろに見込む。

いわき市は二十四日に検証委員会の初会合を開き、市の対応や市民の避難行動を中心に確かめている。他の市町村も被災の実情に応じた検証に取り掛かっている。

大きな災害への対応は、国、県、市町村の役割分担と同時に、垣根を越えた連携と協力が欠かせない。例えば、一つの河川であっても、上流と下流で、受け持ちの行政機関が異なる場合がある。それぞれの役所の検証結果を照らし合わせて、共通点や相違点を確認しながら、河川の流域ごとの防災や減災に役立てる努力が重要だ。

福島民報社などが加盟する共同通信社の論説研究会の取材で、神戸市の「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」を十二月中旬に訪ねた。センター長の河田惠昭[よしあき]氏は、わが国を代表する災害研究の専門家で、本県でも東日本大震災の前から講演している。河田氏から頂いた資料には「住民が避難指示、勧告になぜ従わないのか」の題目が掲げられた。その中には、昨年の西日本豪雨などの分析を基に、指示や勧告が出されても実際に避難した人は少なかった様子が示されていた。

台風19号の検証でも、避難の在り方が課題に挙がっている。河田氏は「洪水氾濫から避難するという、新たな文化的行為が必要になっている」と指摘し、災害に関する文明(構造物によるハード防災、公助中心など)だけでなく、文化(ソフト防災、自助や共助中心など)を育てる大切さを説いた。県や市町村による検証を通して、県民一人一人が災害に対応する文化を高め合い、共有する仕組みを検討する必要がある。(安田信二)

掲載日:2019.12.30