本宮市と本宮高が連携を強め、成果を上げつつある。生徒は市の実情をゼミ形式で学び、地元食材を使った商品開発などに取り組んでいる。市は高校の活動を支援し、生徒の意見を施策に反映させようとしている。昨年四月に締結した包括連携協定がよりどころとなっており、行政と高校が協力して課題解決に当たる「本宮方式」はまちづくりの新しいモデルといえそうだ。
二〇一九(令和元)年秋の台風19号が契機だった。被災者支援に奔走する生徒に対し、感謝の声が上がる。市は本宮高をかけがえのない地域資源と考え、継続的な関係を築くため、包括連携協定を結んだ。在学中に地域を学び、好きになってもらうことで、卒業後の地元定着につなげる狙いもある。
行政と高校の連携は各地で進んでいるが、協定締結に至るのは県内十三市で初めてだった。市は協定締結を機に補助金を支出、本宮高は「総合的な探究の時間」の授業でゼミ活動に活用している。
初年度は十七ゼミが誕生し、全生徒が学年を超えて興味のあるゼミに参加した。地元野菜を使った総菜パンなどを考案・販売し、長いも入りのスティックポテトは今や農作物直売所の人気商品だ。このほか、絵本制作を通じた子育て環境向上、防災動画作成など活動は多岐にわたった。生徒のやる気を引き出し、学校に活気を生んでいるという。
二年目の今年度は「はたらく」「そだてる」「くらし」「からだ」「その他」の五分野に沿って二十前後のゼミを開く予定で、夏休み明け後、活動を開始する。課題解決に取り組んだ体験は実社会で生きるに違いなく、主体的に物事を捉え、考える姿勢が身に付くよう期待したい。
生徒の活動は市民に刺激を与えた。まちづくり団体「もとみやプラット」が今春誕生し、市民十五人が、本宮地方を往来した戦国武将伊達政宗や宿場町の歴史などに着目した事業を模索している。行政、市民、高校が役割を分担し、連携しながら、どう進めていくか展開が楽しみだ。
市は今後、移住・定住策のワークショップに生徒の参加を求めるほか、総合計画策定に先立ち生徒からアンケートをとる意向だ。思いもよらない大胆な発想が出てきたら、どう応えるのだろう。「実現は無理」と片付けてしまっては生徒の落胆を招くだけであり、実現可能性を探る真摯[しんし]な議論を望みたい。
連携協定に基づく市と本宮高の協働作業は、行政の覚悟と説明責任が試されるのかもしれない。(鞍田炎)