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東山温泉に「聖地巡礼」の動き 漫画「花唄メモワール」の舞台 福島県会津若松市

2023.01.30 09:30
舞台のモチーフとなっている向瀧

 福島県会津若松市の東山温泉旅館を舞台に取り入れた漫画「花唄メモワール」の連載が芳文社の月刊コミック誌で始まり、話題を呼んでいる。女子高生の主人公が新人仲居として成長する姿を描いた物語で、市内の建物や風景を作中にちりばめている。ファンの間では早くもゆかりの地を歩く「聖地巡礼」の動きが出てきた。地元の観光関係者は歓迎する。作者の一ノ瀬けいさん(岩手県在住)は「取材などで快く受け入れてくれた会津に恩返しがしたい」と執筆に打ち込む。


 漫画の主人公・梅がアルバイトをするのは「花瀧屋」。一ノ瀬さんは東山温泉にある1873(明治6)年創業の向瀧にイメージを寄せて描いている。旅館側の協力を得て国登録有形文化財となっている木造建築の外観や内装を表現している。主人公を支える「花山芸妓(げいぎ)」の藤野は会津東山芸妓がモデルだ。一ノ瀬さんは現役芸妓のお座敷を体験し、参考にしたという。

 所々に会津らしさを添える。第1話では主人公が郷土料理「わっぱ飯」にちなんだ「わっぱ弁当」を賄いで食べる場面がある。主人公はせりふで「蒸された具材の香りがお米に染みてサイコ~」と魅力を表現している。

 一ノ瀬さんは今後の展開によっては季節の行事、地元に伝わるしきたりなどを描く構想だ。市内の初市「十日市」を今月視察し、会津漆器の絵付けも体験した。こうした取材を生かして筋書きを膨らませたいと考えている。

 作品を書いたのは会津とゆかりのある歴史小説や漫画との出会いがきっかけだった。旅行を通じ、もてなしの温かさや食のおいしさに触れ、作品の舞台に会津を選んだ。一ノ瀬さんは「会津の人にも楽しんでもらえるような地域に根差した作品を描いていきたい」と語った。

      ◇      ◇

 交流サイト(SNS)上では、漫画を読んだファンが向瀧を訪れた報告が投稿されている。向瀧の平田裕一社長(61)は女性が輝くストーリーに共感している。「若い女性社員にとって励みになる」と受け止める。東山温泉観光協会の斎藤純一会長(72)も「温泉街の魅力発信につながる」と期待した。

 市内の関漆器店の関盛夫社長(80)は一ノ瀬さんから取材を受け、料理と漆器の描写について相談を受けた。「漫画を通じて会津の伝統文化が広く知られるきっかけになってほしい」と語った。

 会津若松観光ビューローの佐藤光一常務理事(63)は「会津観光全体の波及効果につながってほしい」と願った。


※花唄メモワール 芳文社発行の月刊コミック誌「まんがタイムきららフォワード」の2022年12月号(10月24日発売)から連載している。毎月24日発売で、定価650円(税込み)。全国の書店などで取り扱っている。コミック誌の代表作にはアニメ化されている「ゆるキャン△」をはじめ、「がっこうぐらし!」「スローループ」がある。