杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(29) 農業金融の新しい方向 投資家と新たな関係

2019/03/11 22:53

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 農業から始まる地域振興も理念だけではできません。最近の農業はやはり施設産業でもあり、新しいことをしようとすると、資金をどうするかが問題になります。

 各地域のJA等を訪問すると、決まって気が付くのが、一九七〇年代に国などからの補助金等で作られた多くの施設が更新時を迎えているということです。また、このコラムでも幾度か触れているICT(情報通信技術)を活用した新しいタイプの農業を行うとしてもそれなりの資金がいるでしょう。こうなると、また補助金を活用すればという話になりそうですが、農業施設の運用が必ずしも効率的でなかった最大の理由は、補助金が使われることが使用目的の限定につながっていたことです。

 農業技術の進歩はどんどん進行しており、農産物流通の仕組みもどんどん変わっていくでしょう。この中で、フレキシブルな運用を通じて、時代に合った設備を整えていく必要があり、制度上、硬直的になりがちな補助金に頼り続けるのには限界があります。

 そのための資金調達の方法として、最近、新しいタイプの「農林債」の発行について一部のJA組織、証券会社と研究を進めているところです。ごく簡単に説明すると、新たなプロジェクトとしての農作物の栽培から加工・流通までのプロセスについてICTを利活用して見える化=価値化し、証券化の手法を使って債券として、地域の住民やこれらの事業に関心のある投資家へ分割販売して、必要資金を得る方法です。

 生育状況や流通の過程が全て見えることで、債券の購入者はそのプロジェクトへの参加者という意識=農業への関心を高めることができますし、継続的なモニタリングも可能になります。また、その関心が深くなることで、購入者もその必要性と、価値向上につながるということが分かれば、その資金で作られた設備用途の柔軟性にも賛同するでしょう。

 これまでのJAの信用事業では、准組合員としての地域住民からの預金や准組合員へのローンは増えましたが、農業への賛同にはなかなか結び付いていなかったように思います。今回、研究している新たな債券についてもそうですが、金融を一つの柱に投資家という新たなステークホルダーとの関係を結ぶことができます。こういったものの導入は福島の農業の実態を知ってもらうよい機会になるのではないでしょうか?。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)