発想の転換(5月28日)

2019/05/28 09:18

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 メスを手にした医師が、キノコで作られた細い人工血管の表面を薄くはがしたり、切ったりする。触感は実物に似ている。高い技術が必要な心臓手術の訓練用として生み出された。

 福島市に研究開発拠点を置く医療機器製造・販売業イービーエム社長の朴栄光[ぱくえいこう]さんは、身近な素材に着目した。繊維質のキノコは一定の硬さがあり、加工しやすい。水分を含むため導電性があり、電気メスに適する。新聞記事で紹介されて反響を呼び、国内外の病院からの問い合わせが続く。

 食卓に並んだ料理や、街中の看板、マンホールのふたの模様といった身近な品々に興味を抱く。そこから手掛かりを得て、新しい機器を次々に思いつく。人体に近い材料を探していた時には、スーパーに並ぶキノコを前に、ひらめいた。エリンギやエノキダケなどの数種類を試して、改良を重ねた。

 大学院で学んでいた頃、医学と工学の懸け橋を志し、手術訓練機器の会社をつくった。第一号の製品を購入した福島医大の教授と交流を深めて、活動の場を震災後、福島市に移した。国内の心臓外科の権威が施設を訪れ、技術向上へ意見を交わす。第二の古里を、ものづくり技術で塗り替える。