浄化後の水、タンク保管 第一原発敷地拡張 議論へ 政府小委

2019/08/10 08:30

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 東京電力福島第一原発で発生する汚染水の浄化後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水の処分方法を検討する政府の小委員会は九日、東京都内で会合を開き、敷地内でタンクによる貯蔵を継続する「長期保管」の議論を本格的に開始した。敷地不足を理由にタンク保管の継続に難色を示す東電に対し、「中間貯蔵施設用地を活用し原発の敷地を拡張すべき」との新たな案や、敷地利用の全体図について東電の説明不足を指摘する声が上がった。小委員会は敷地拡張など各論点の課題を整理した上で、次回会合で協議を継続する。

 小委員会は約七カ月ぶりの開催で、昨年八月の公聴会で出席者の要望が多かった長期保管を初めて正式な議題とした。東電福島第一廃炉推進カンパニーの松本純一廃炉推進室長が敷地内でのタンク保管は二〇二二(令和四)年六月にも限界を迎えるとの試算を説明。使用済み核燃料や溶融核燃料(デブリ)の保管施設などの用地が要るため、計画を超えるタンク増設は難しく、大型化による容量増や敷地外への移送も困難と訴えた。

 これに対し、小山良太委員(福島大食農学類教授)は三日に第一原発を視察した印象として「敷地を拡張するのが一番いいのではないか」と指摘。中間貯蔵施設用地として環境省が取得した第一原発隣接地の活用を考えるべきと提案した。

 松本氏は小山氏の意見に「環境省と地権者の契約をし直すなどさまざまな調整が必要だ」と否定的見解を示した。閉会後の報道陣の取材に「環境省や経済産業省を巻き込んだ議論が必要だ。敷地外にはみ出すのは不可能ではないが、ハードルが高い」と語った。

 敷地拡張について、小委員会の事務局を担う経済産業省資源エネルギー庁の奥田修司廃炉・汚染水対策官は「どう考えるべきか、委員会としてある程度の方向性を出す必要がある」とし、次回までに考え方を整理するとした。

 タンクで保管している汚染水を処理した水は現在、約百十五万トン。東電は二〇二〇年末までに約百三十七万トン分までタンクの増設を計画している。

 福島第一原発敷地の拡張案について、立地する双葉町の伊沢史朗町長は「保管容量が逼迫(ひっぱく)するのは明らかだ。浄化処理後の水の扱いは国と東電が国民の理解を得られるよう説明し、責任を持ち判断すべきだ」とした。大熊町の渡辺利綱町長は「正式決定ではないのでコメントできない」と語った。

■貯蔵継続 求める声

 長期保管を巡る議論では、漁業者をはじめとする県民の風評への懸念に配慮し、トリチウム水のタンクでの貯蔵継続の必要性を主張する意見が目立った。

 複数の委員から「地元の生活を犠牲にして廃炉を進めるのは論理が破綻している」との指摘や「風評に大きな影響を与えないと判断される時期までの貯蔵が必要ではないか」との考えが示された。

 一方、長期保管しても処分すれば風評は起こるとして「処分方法の絞り込みを急ぐべきだ」との反対意見も出た。他にも、東電が敷地全体の状況を示す資料を用意しなかった姿勢に対し、「スペースに余裕があることを隠しているという誤解を生む」との苦言もあった。

【政府の小委員会で出た主な意見】

・タンクでの保管期限の条件設定
・風評に大きな影響を与えないと判断されるまでのタンク保管継続
・長期保管を廃炉全体の進行を踏まえて考えるべき
・敷地が足りないのはタンク保管ができない理由にならない
・廃炉のために地元の生活を犠牲にするのは論理が破綻している
・第一原発敷地内で掘り起こした土をとどめておくのにトリチウム水を環境放出するのは理解が得られない
・第一原発の敷地が足りないなら拡張すべき
・長期保管でなく、処分方法を決めるべき
・東電が敷地不足を説明するのに敷地利用の全体図を見せない姿勢は不十分