【処理水への言及】国全体の議論を促す(9月23日)

2019/09/23 09:25

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 東京電力福島第一原発の放射性物質を含む処理水の処分を巡り、大阪から一つの考え方が発せられた。政府の小委員会は海洋放出や地下埋設などに加えて、長期保管の選択肢の検討も始めている。しかし、道筋は見通せないのが現状だ。国民が小委員会での話し合いに関心を持ち、議論の深まりと広がりを促す必要がある。

 松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事は、科学的に環境被害がないという国の確認などを条件に、大阪湾で放出する可能性に言及した。

 松井氏は「全く環境被害がないものは国全体で処理すべきだ」と語り、検証委員会の設置による科学的根拠の明示を求めた。吉村氏は「見て見ぬふりをしてはいけない。国に協力してと言われれば協力する」と述べた。

 両氏の発言には反発が出ている。大阪府漁業協同組合連合会は「国内外での風評被害の広がりなど、大阪のみならず兵庫も含めた大阪湾、瀬戸内海での漁業の将来に与える影響は計り知れない」として、発言の撤回と、海洋放出を行わないように要求する緊急抗議文を提出した。

 県は小委員会の状況を踏まえて「風評などの社会的な影響を含め、丁寧な議論を尽くした上で判断してほしい」と説明している。災害や公害などの課題は年月を経るにつれて、それぞれの地域の事柄として語られがちだ。県は大阪からの言及に対する本県の受け止め方や、政府方針の取りまとめに当たっての意見と要望を検討するべきだ。

 国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、日本と韓国は処理水の処分を巡って批判の応酬を繰り広げた。事実や科学的根拠に基づかない主張に対して、日本政府は反論を続けなければならない。そのためにも処分方法を国全体で議論し、その経緯と結論を海外に丁寧に説明する努力が欠かせない。

 福島第一原発の廃炉や被災地の復興には、経済産業省をはじめ、環境省、復興庁、原子力規制委員会、原子力規制庁などの多くの役所が関係する。政府は「閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有する」との方針を以前から掲げ、安倍晋三首相は二十日に開いた政府の復興推進会議でも指示した。

 問題の解決を目指すには、小委員会とともに、内閣を挙げての一層の取り組みが大切だ。処理水を直接、受け持つ窓口がどの役所にあるかにかかわらず、全閣僚が福島第一原発を視察し、構内に設置されたタンク群の現状を確かめてほしい。 (安田信二)