【震災追悼施設】来てもらう工夫が大事(9月30日)

2019/09/30 09:03

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 国と岩手県が陸前高田市の太平洋岸に建設した「東日本大震災津波伝承館」と国営追悼・祈念施設は二十二日に開所した。東北三県に整備中の復興祈念公園内に完成した最初の施設だ。初日だけで約二千人が訪れた。犠牲者を悼み、教訓をかみしめた。鎮魂と惨禍の記憶継承に果たす役割の大きさを示した。

 本県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」は来年七月、双葉町中野地区に開所予定だ。地震と津波に加え、東京電力福島第一原発事故という未曽有の複合災害を伝える特別な意味を持つ。被害の実態と廃炉、復興の歩みを発信し、活用してもらうために工夫を凝らす必要がある。

 東京五輪・パラリンピック開催に合わせて、双葉、浪江両町にまたがる約五十ヘクタールで復興祈念公園の整備が進む。公園内の国営追悼・祈念施設は広場や丘を配し、散策しながら思いを巡らす環境となる。民俗芸能を伝える活動場所を設ける。県は伝承館の展示品として震災前の暮らしが分かる写真や映像、線量計や避難場所に残された生活用品など約十六万点の収集を終え、展示方針が決まった。

 立地場所は避難指示解除準備区域内にあり、町は来年春の解除を目指している。放射線量の低減と国内外への理解、周知が不可欠だ。国は責任を持って取り組まなければならない。

 主要道路の六号国道から離れているのは不便な点だ。岩手県の公園は四五号国道に面し、奇跡の一本松、震災遺構などが歩いて行ける範囲にある。道の駅も開業した。震災を追体験するだけでなく、一定時間を滞在できる空間にしてほしい。双葉町が本県の伝承館隣に造る産業交流センター、津波に遭い保存方針の決まった浪江町請戸小校舎などとの連携を模索するべきだ。

 県は被災地見学を教育旅行に組み込むよう、県外の高校に働き掛けている。多感な青少年が被災の実情を知る意味は大きい。震災と原発事故から間もなく十年が経過し、国内外での風化が懸念される。大災害の後に生まれた子どもが増えてくる中で、学びの場と機会を提供する重要性はこれまで以上に増す。

 浜通りを中心に新たな産業創出の動きが活発になっている。南相馬市原町区にロボット研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」が完成し、果物や花卉[かき]栽培などに挑戦する人が増えている。意欲あふれる取り組みも、ぜひ大勢の人に見てもらいたい。被災地の真の姿を学べるルートづくりに向けて関係者には不断の努力を望む。(鞍田炎)