東電強制起訴裁判 旧経営陣無罪に控訴 検察官役の指定弁護士

2019/10/01 08:19

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 東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の裁判で、検察官役の指定弁護士は三十日、三人を無罪とした東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。指定弁護士は三人にいずれも禁錮五年を求刑していた。関係者によると、控訴審初公判は公判前整理手続きなどを経て約一年後に開かれる見通しという。企業トップの刑事責任を問う裁判は高裁に審理の場を移す。


 控訴について指定弁護士は「このまま判決を確定させるのは著しく正義に反する。被告の負担を考慮してもなお、上級審で判断を求めるべきだ」とコメントを出した。

 九月十九日の東京地裁判決で無罪を言い渡されたのは、勝俣恒久元会長(79)と武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の三被告。

 判決公判で地裁は、東電の大津波試算の根拠となった国の地震予測「長期評価」の信頼性を否定。「(三人には)大津波の予見可能性はなく、対策工事が終了するまで原発運転を停止すべき法律上の義務はなかった」と判断した。その上で、原発事故発生前の法令上の規制は、原発の絶対的安全性の確保まで前提としていなかったとし、「三人が責任ある立場であったからといって刑事責任を負うことにはならない」と結論付けた。

 指定弁護士は公判後の会見で「国の原子力行政に忖度(そんたく)した判決だ」と批判。「東電担当者の危機意識や津波試算結果を全く無視している。到底納得できない」としていた。

 被害者参加人の代理人弁護士や福島原発告訴団、福島原発刑事訴訟支援団は意見書の提出や署名活動を通じ、指定弁護士に控訴するよう求めていた。

 告訴団の武藤類子団長は「控訴されて良かった。二審では事故の真相解明に向けた証拠が示されることを期待する。県民が納得する判決を出してほしい」と話した。

 東電は「指定弁護士が控訴したことは報道を通じて承知しているが、刑事訴訟に関しては当社としてコメントを差し控える」とした。