早く安全な橋を 矢祭の高地原地区、生活路が流失 住民の不安拭えず

2019/10/21 10:54

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孤立状態となっている矢祭町の高地原地区と対岸をつなぐJR水郡線の鉄橋。住民らは橋を渡り水や食料品などを運んでいる
孤立状態となっている矢祭町の高地原地区と対岸をつなぐJR水郡線の鉄橋。住民らは橋を渡り水や食料品などを運んでいる

 台風19号による久慈川の増水で橋が流され、十一世帯の孤立が続く矢祭町内川の高地原(たかちはら)地区。緊急対応として、住民は不通となっているJR水郡線の鉄橋を渡り、生活物資を運んでいる。一方で、JR東日本水戸支社は十一月一日に鉄道の運転を再開する方針を示しており、運行すれば町民は鉄橋を通行できなくなる。町は二十日、住民説明会を開き、応急の橋を月内にも整備する方針を明らかにした。本格的な復旧には時間がかかるため、町営住宅などへ避難を促す案も示している。同地区の現状をリポートする。(棚倉支局長・石井拓也、本社報道部・金沢葉月)

 周囲を山に囲まれた同地区の住民にとって、久慈川に架かる延長約八十メートルの高地原橋は、唯一の生活路だった。それが、台風19号による増水で併設していた水道管ごと流されてしまった。以降、住民は水や食料を運ぶため、鉄橋の線路脇を歩いて渡っている。大人二人が擦れ違えるほどの幅しかなく、照明もないため危険が伴う。

 地区内に井戸は数カ所あるが、飲料水としては使えず、洗濯や風呂に活用している。住民はポリタンクに水を入れ、一日に何度も家に運び込むつらい作業を続けている。

 期限が迫る安積永盛-常陸大子(茨城県大子町)駅間の再開通に伴い、町は急ピッチで応急の橋の設置準備を進めている。JR東日本の許可を得て、鉄橋に臨時の水道管を敷設することも決めた。

 町によると、応急の橋は車と人が通れる予定だが、欄干などはなくあくまでも一時的な措置だという。再び増水などの自然災害が発生した場合、使えなくなる可能性もある。応急の橋より強度を上げた仮の橋の建設には半年、恒久的な橋の整備には三年ほどかかるとみられる。

 住民説明会を終え、同地区で暮らす設備工の石井広美さん(50)は「まだ不安は拭えないが、町を信頼して任せるしかない。安定した生活に向けて、災害に強い橋の早期完成を願う」と語った。

 町が示している町営住宅などへの避難案は「空き巣が心配」「家財道具をそろえるのが大変」などの理由で敬遠する住民が多い。

 「一日でも早く応急の橋が完成してほしい」。高地原地区に家族で住む会社員松本好郎さん(44)は町の説明を受け、ほっとした表情を見せた。松本さんの父勇一さん(75)と母きみさん(73)は「(鉄橋を渡るのは)疲れてしまう。不便だが愛着がある自宅を離れたくはない。被災地を狙う犯罪も聞いており、避難には抵抗感がある」と声をそろえる。