【新型コロナ 新酒鑑評会】「日本一」の酒を飲もう(5月23日)

2020/05/23 09:47

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 酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が共催する二〇一九酒造年度全国新酒鑑評会の入賞酒が発表され、本県の三十三点が入賞を果たした。最終審査は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となり、都道府県別金賞数八年連続日本一とはいかなかったが、全国に胸を張れる入賞数だ。高い評価を受けた蔵元をたたえ、支えたい。

 金賞を決める最終の審査は十二、十三の両日、広島県東広島市の酒類総合研究所で予定されていた。政府の緊急事態宣言が全国に出され、都道府県をまたいで審査員が集まるのは困難だった。本県は昨年、史上初の七年連続金賞数日本一を達成した。八年連続を目指してきた各蔵元の酒造りの苦労を考えれば、最終審査を経た上での記録更新を祝いたかった。

 昨年からの本県の酒造りは苦難の連続だった。仕込みの時期に台風19号が襲った。県酒造組合などから酒米の精米を委託されている工場が浸水した。特別な方法で栽培した酒米を全て失った蔵元もあった。ほとんどの酒蔵は県外の精米業者を捜し当て、仕込み時期に何とか間に合わせた。仕込み時期は記録的な暖冬で温度管理に苦しめられた。

 今回の大量入賞は、各蔵元の酒造りに懸ける強い思い入れの証しだろう。県酒造組合や県ハイテクプラザなどの支援によって、どんな環境でも高品質の酒に仕上がるシステムが確立されているのも強みと言える。

 その日本酒は今、新たな難敵と対峙[たいじ]している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、消費量が激減している。飲食店の休業や営業時間の短縮のあおりを受け、県内の酒造メーカーの多くは大量の在庫をさばけない悩みを抱える。会津地方の経営者の一人は「経営も厳しいが、魂を込めて仕込んだ酒が飲んでもらえないのが寂しい」とつらい胸の内を語る。

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降の金賞数日本一の継続は、再生・復興のシンボルとなってきた。記録更新が持ち越されても、全国に誇れる「日本一」の酒は、県民の心を支えている。

 今こそ、私たち県民が県内の蔵元に恩返しをしよう。再開に動き出した居酒屋などの飲食店では県産の日本酒を注文したい。すっかり定着した「家飲み」の食卓にも一本置いて、味わってみてはどうか。心身の負担が大きい自粛活動を続ける首都圏の知人に贈れば、喜ばれるに違いない。一人ひとりが感謝の行動を起こすことが、八連覇の後押しになる。(安斎康史)