福島県、防災研究者育成へ 双葉に新設「伝承館」

2020/05/24 07:58

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有
原子力防災などの研究者を育成する「東日本大震災・原子力災害伝承館」の完成イメージ
原子力防災などの研究者を育成する「東日本大震災・原子力災害伝承館」の完成イメージ

 今夏にも双葉町で県アーカイブ(記録庫)拠点施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」が開所するのに合わせ、県は若手研究者の育成に乗り出し、地震や津波、原発事故の複合災害を経験して得た知見を後世に引き継ぐ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から十年目に入り、伝承館を拠点として記憶や教訓の継承に向けた風化対策を本格化させる。

 今年度、まず県内外で防災やリスクコミュニケーションに関する研究に取り組む大学教授らを上級研究員として迎える。上級研究員は三人程度を非常勤で雇用し、主な研究領域の検討を進める。研究分野は災害対策の行政対応や原子力防災、応急や中長期の避難、被災者支援、ボランティア、防災・減災教育などが見込まれる。

 来年四月以降、大学院の博士課程修了者ら若手の研究者を常勤の研究員に雇用。研究分野に応じて複数人を三~五年程度採用する。上級研究員の指導の下で、実践的な防災の専門家として養成する。

 自らの研究成果を地域と共有し、防災力の底上げにつなげる。県内外の自治体、企業などの防災担当者の研修で講師を務めることなどが活動に想定されている。非常勤で館長を務める高村昇長崎大原爆後障害医療研究所教授もセミナーなどで講師を務める予定。

 県は二月末現在で、震災と原発事故関連の資料約二十二万八千点を集めた。若手研究者はこれらの資料を活用するとともに、各地の震災遺構を巡り、防災や風化防止につながる見識を高める。

 開所の準備を巡っては、新型コロナウイルス感染拡大の影響が生じている。県は感染防止対策として県境をまたぐ往来の自粛を要請しており、上級研究員の選考に向けた関係機関との協議は、ほぼ電話やメールなどに限られている。

 さらに展示物の設営を担う都内の会社担当者は来県できず、現地での詳細な打ち合わせは困難な状況が続く。県生涯学習課は「震災と原発事故を伝える取り組みが途絶えてはならない。感染予防に配慮しながら、風化を防ぐ事業をしっかりと進めたい」としている。

 伝承館の隣接地には、国と県が復興祈念公園の整備を進める。施設の開所に合わせ、一部を供用する見通し。双葉町は伝承館近くに産業交流センターを開く。町は七月のオープンを目指しているが、新型感染症の拡大による影響を見極めている。