感染者ゼロの会津と岩手県(5月24日)

2020/05/24 09:36

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 わたしが住む街の駅前のデパートで老舗や人気店が集まって開かれるイベントに、柳津町の名物「あわまんじゅう」がときおり出店する。黄色いアワをまぶして蒸し、うちわであおいで冷まし薄いビニールで包んで提供する。

 この過程は全てオープンになっていて、おいしさとアワの珍しさからか、行列ができるほどの人気である。見かけると必ず買う。

 福島県で新型コロナウイルスの感染者が出始めた時期。まんじゅうを作る職人氏に「とうとう福島にもコロナ、大変ですね」と声を掛けたら「わが会津には来ていないんですよ」という。

 そういえばと思い、本紙が掲載している感染数を市町村ごとに表した地図を毎日チェックしてきた。感染者の発生は中通りと浜通りだけで、会津地方では確認されていない。なぜなのだろうか。

 全国で唯一、県単位で感染者ゼロなのが岩手だ。盛岡市に住む知人は「田舎だから」という。岩手県にはJR東北新幹線の駅が七つもある。感染者が急増している東京など首都圏から、ウイルスが持ち込まれる恐れは十分あった。

 地元紙・岩手日報の報道や達増拓也知事の話によると、第一に人口密度が低いことにあるのではないかという。岩手県の面積は北海道に次ぐ広さだが、人口は約百二十二万人。人口密度は一平方キロメートル当たり約八十人。これが「密」が起こりにくい要因ではないかという。

 岩手県は内陸部と沿岸部との生活圏に距離がある。その間の人の移動が少ないことも背景ではないかと分析している。

 さらにコロナ対策として、うがい、手洗いや外出自粛を励行する「真面目な県民性」があり「いざというとき一人ひとりが考えることが、東日本大震災の津波の経験からできるようになっている」ともいう。

 会津地方は岩手県と似ている。会津地方は千葉県に匹敵する面積があるが、人口は約二十六万人。人口密度は一平方キロメートル当たり約四十八人である。

 奥羽山脈を境に中通りとは違う風土があるとされる。こうした地理的背景、岩手と同様な会津人の意識、生活慣習などが感染者ゼロにつながっているのではないか。

 新型コロナウイルスの伝[でん]播[ぱ]は「移動と交流」による。汚染地域に会津地方の人々がどれだけ出かけたのか、汚染地区から会津にどれだけの人が訪れていたのかは分からない。観光がオフシーズンであったこともあるのかもしれない。

 以上は勝手な推測だが、「偶然」では片づけられない。疫学的な手法で調べる必要があると思う。感染者増は全国的に落ち着いてはきている。しかし、終息するかどうかは不明だし、第二波の懸念もある。会津地方や岩手県の例を調査・分析すれば、今後の対応を考える上で良い参考になるのではないか。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)