【評価高まるラジオ】あらゆる分野に生かそう(7月24日)

2020/07/24 09:56

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 新型コロナウイルスの影響で在宅時間が長くなったためか、ラジオの利用者が増えている。六月には、ラジオを聴く行為が脳の成長を促すことを示す研究データも発表された。新しい生活様式を探り、災害への備えを万全にするためにも、ラジオが身近にある暮らしの定着は重要だ。

 スマートフォンなどでラジオ番組を無料で聴くことができる「radiko(ラジコ)」の運営会社によると、四月の聴取者は二月に比べ21%増え、延べ約九百十万人になった。本県をエリアとするラジオ福島(rfc)のラジコを通じた聴取者も、コロナ前から20%以上増えた。

 外出や人との接触を控える中、仕事や家事をしながら利用できる「ながらメディア」の手軽さ、聴き手に語り掛けるスタイルによる親近感や安心感などが評価されているとみられる。ラジコなどには放送済みの番組が聴けるタイムフリー機能もあり、ラジオ福島の編成幹部は「深夜番組の反響などを見ると、若い聴取者が確実に増えているという実感がある」と話す。

 ラジコ運営会社と脳科学者の加藤俊徳医師らはラジオが脳に与える影響を研究した。大学生八人に一カ月間、毎日二時間以上ラジオを聴いてもらい、磁気共鳴画像装置(MRI)で脳を調べたところ、記憶や聴覚をつかさどる領域が拡大した。加藤医師はラジオが学力向上や老化防止に有効との見解も示した。他の専門家も含めて研究が進み、教育や医療などの分野でラジオが生かされるよう望む。

 本県では東日本大震災、東京電力福島第一原発事故をきっかけに、迅速、確実に災害情報を伝えるラジオの存在価値が高まった。富岡町が郡山市で運営した「おだがいさまFM」などは、離れ離れになった避難者の心をつなぐよりどころの役割も果たした。近年の台風や豪雨災害の深刻化を受け、ラジオ福島は福島民報社と「夜の避難訓練」に取り組み、会員制交流サイト(SNS)を活用した災害情報発信にも力を入れている。

 いわき市は甚大な被害が出た昨年の台風19号を踏まえ、防災ラジオ千台を避難支援が必要な高齢者に無償で貸し出すことを決めた。土砂災害や避難などの情報を自動で伝える機能があり、他市町村にも広がることに期待する。

 ラジオはペット捜し、尋ね人、熊の出没まで扱うなど、近い距離で住民に寄り添う。想像力をかき立て、思いがけず有益な情報に出合える可能性が高いメディアでもある。その特性を、教育現場でも伝えてほしい。(渡部 育夫)