温泉地の看板娘(9月5日)

2020/09/05 08:56

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 温泉街に登場するアニメ調の女性にふと目を引かれる。福島市の飯坂温泉を擬人化したキャラクター「飯坂真尋[まひろ]」だ。特別観光大使として、等身大のパネルでPR役を務める。名実ともに看板娘となり、活躍の幅を広げている。

 新たな試みは勇気がいるが、思惑は当たった。若い男性の団体など、これまで見られなかった客が通りを歩くようになった。グッズが出る度に駆け付けるファンもいる。いったん訪れれば、お湯の良さや街の風情のとりこになる。何より地域ぐるみで来訪者を受け入れる温かな懐が、再び足を運ばせる。

 飯坂温泉は、かつて松尾芭蕉が宿を求めた地として名高い。芭蕉一門の理念の一つに「不易流行[ふえきりゅうこう]」がある。解釈は諸説あるが、変わらぬことと流行を取り入れることは同様に大切であると説く。温泉街に溶けこむ「真尋ちゃん」の姿を見たら、芭蕉も一句したためたくなったかもしれない。

 感染症が影を落とす今、新しい客層は心強い味方となっている。「Go To トラベル」もいいが、最後に物を言うのは観光地そのものの魅力だろう。歴史を感じる町並みに、さわやかな新風が吹き込むような場所なら、何度でも通いたくなる。