福島県からの放出に懸念 茨城県知事「新たな風評も」

2020/09/10 08:20

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 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の扱いを巡り、政府は九日、処分方針決定に向けた第六回意見聴取会を都内で開いた。福島県の隣県で、東電福島第一原発事故の風評被害に苦しんできた茨城県の大井川和彦知事は、政府小委員会の報告書に基づき処理水が海洋や大気に放出されれば、「新たな風評が生じかねない」として、福島県からの処分に対し強い懸念を示した。


 大井川知事は福島県以外の知事で、初めて意見聴取会に出席した。

 大井川知事は「小委の報告書は結論ありきのとりまとめのようにも見えてならない」と疑問を呈し、「原発敷地から直接海に流すのではなく、無人島から放出するなどの方法が十分に検討されたのか明らかにすべき」との独自の考えを示した。その上で、政府に報告書を既定路線とせず、地域社会や環境への影響を踏まえた適切な判断を要請した。

 新型コロナウイルス感染防止のため、大井川知事と宮城県の遠藤信哉副知事はウェブ会議形式で出席した。遠藤副知事は新型コロナの感染が拡大している現状での環境放出について「方針決定が地域経済にさらなる悪影響を及ぼす懸念がある。公表時期を十分考慮してほしい」とした。

 都内の会場では、千葉県の滝川伸輔副知事と日本商工会議所の久貝卓常務理事が意見を述べた。滝川副知事は県内の漁業や観光業で福島第一原発事故の風評が残る現状を踏まえ、「海洋放出されれば、福島、宮城、茨城と変わらない影響が出る」と指摘。実効性のある風評対策を事前に示すよう要望した。

 久貝常務理事は環境放出による風評拡大を懸念し、「産品の買い取り、事業継続や新商品開発に向けた支援策が必要」と具体的な風評への対応を求めた。

 東電は原発敷地内で処理水をためるタンクが二〇二二(令和四)年夏ごろに満杯になると試算している。放出準備に約二年かかるとされる。会合終了後、座長の松本洋平経済産業副大臣は方針決定時期について「いつまでも先送りはできない」と述べたが、時期には言及しなかった。政府は引き続き意見聴取会を開催する方針で、参加予定団体などと調整している。

 意見聴取会をインターネットで傍聴した県原子力安全対策課は「近県、団体とも風評被害を懸念していた。処理水に関する正しい情報の発信が欠かせない」と具体的な対策を政府に求めた。