

東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う県内外への避難者数は七月現在、三万七千二百九十九人で、最も多かった二〇一二(平成二十四)年時に比べ十二万七千五百六十六人減少した。仮設住宅への入居者は前年同期比で百七十二人減った。災害公営住宅への入居が進み、仮設住宅への入居者は大幅に減っている。ただ、避難者が抱える課題は個別化、複雑化しており、一人一人の実情に応じた住居確保支援や帰還に向けた環境整備が課題となっている。
■住宅無償1年延長 大熊・双葉の避難者
県内外への避難者数と仮設住宅の入居者数の推移は【グラフ(1)・(2)】の通り。
七月現在の避難者の内訳は県外が二万九千七百六人、県内が七千五百八十人、避難先不明が十三人となっている。
仮設住宅の入居者数は七月三十一日現在で十二人となり、ピーク時の二〇一二(平成二十四)年七月の三万三千十六人の0・03%ほどに減っている。避難指示の解除、災害公営住宅の整備などが進み、帰還や新たな住宅への移転が進んでいるとみられる。
県は仮設住宅、アパートなどの借り上げ住宅について、大熊、双葉両町からの避難者への無償提供を二〇二二(令和四)年三月末まで一年延長した。
富岡、浪江両町の全域と葛尾、飯舘両村の帰還困難区域から避難した住民のうち、自宅の建築工期に遅れが生じた場合などは無償提供期間を延ばす「特定延長」については、予定通り二〇二一年三月末で終了する。
■災害公営住宅4767戸完成 6月末現在 入居率は87・09%
原発事故に伴う被災者向けの災害公営住宅は六月末現在、十五市町村の四千八百九十戸のうち、四千七百六十七戸が完成した。整備計画に占める完成戸数の割合を示す進捗(しんちょく)率は97・48%となっている。
市町村別の整備状況は【図】の通り。いわき市を除いて各市町村で全ての計画戸数が完成した。完成戸数は最も多いのは、いわき市の千六百七十二戸で、次いで南相馬市の九百二十七戸、郡山市の五百七十戸など。全体の87・09%に当たる計四千百五十二戸が入居済みとなっている。
災害公営住宅は、避難指示が解除された地域からの避難者は入居できない。ただ、解除後も生活基盤が十分に整っていない地域が少なくないため、県は県北、相双の両地方などで入居希望者がない空き室で受け入れられるよう柔軟に対応している。
計画した災害公営住宅のうち百二十三戸は、入居希望者が少ないとして整備を保留している。内訳はいわき市が七十二戸、整備地未定が五十一戸。県は仮設住宅や借り上げ住宅の供与期間、福島第一原発が立地する大熊、双葉の両町の住民帰還方針などを踏まえ、需要の動向を見極めて今後、保留している住宅の整備を検討するとしている。
■関連死、今なお増え続ける 前年比 35人増2312人に
県内の市町村が震災と原発事故に伴う避難による関連死と認定した死者数は八月五日現在、二千三百十二人となり、前年同期の二千二百七十七人より三十五人増えた。十年目を迎えた今も、避難などに伴う心労が被災者を苦しめている現状が浮かび上がる。
関連死の死者数は遅くとも二〇一三(平成二十五)年三月十日時点の統計までに直接死を上回った。県内の直接死と関連死、死亡届が出された人を含めた死者数四千百四十二人の55・8%を占める。
関連死者数は南相馬市が五百十七人で最も多い。富岡町が四百五十一人、浪江町が四百四十人と続く。原発事故に伴う避難区域が設定された十二市町村は計二千百一人と全体の90・8%に上る。
地震や津波で死亡した直接死者数は昨年八月五日現在と変わらず、千六百五人だった。死者全体に占める割合は38・7%。南相馬市が五百二十五人で最多となっており、相馬市が四百三十九人、いわき市が二百九十三人と続いている。
今年七月末現在、岩手県の直接死・関連死は四千六百七十四人・四百六十九人、宮城県は九千六百三十八人・九百二十八人。
■震災関連の自殺 計118人 被災3県で最多
震災に関連した県内の自殺者は七月末現在、累計で百十八人に上っている。岩手県は五十四人、宮城県は五十八人で、本県は被災三県で最多となっている。
年単位では二〇一八(平成三十)年の四人が過去最少で、最多は二〇一三年の二十三人だった。男性は七十二人、女性は四十六人。
年代別に見ると、五十代の二十九人が最多となった。六十代が二十一人、七十代と八十代以上がそれぞれ十九人と続いた。
県は臨床心理士や看護士らを派遣して被災者の心のケアに当たっている。県外の避難者に対しては、日本精神科看護協会の看護師などが健康状態の小まめな確認や精神面の支援に取り組んでいる。
(本紙2020年9月4日付に掲載)