【新型コロナ 新政権への要望】役に立つ指針を(9月18日)

2020/09/18 10:41

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 菅政権が始動した。菅義偉首相は十六日夜の就任記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大防止と社会経済活動の両立を最優先課題に掲げた。国民が切実に求めていることに他ならない。公言の実行に期待する。

 会見は国政全般、外交問題まで触れた上、時間的な制約もあったから、新型コロナ対策の説明は十分とは言えなかった。「来年前半までに全ての国民に行き渡るようワクチンの確保を目指す」との表明は具体性があったが、「めりはりある対策」とは何か、踏み込んだ説明も欲しかった。

 新政権に今、注文したいことは、生活感覚に根差した、分かりやすく明快なメッセージ、情報の発信だ。ウィズコロナの生活を考え、行動を定める上で、役に立つヒントと言い換えてもいい。八月の小欄で「長い闘いを乗り切るため、個々が行動指針を持つべき」と記した。私たちが最新の学術論文を読むのは至難の業だ。最も頼りになる、よすがは政府の見解だし、そうあるべきだろう。

 例えば、インフルエンザの流行が予想される中、インフルエンザと新型コロナについて、感染力や致死率の違い、毒性の強弱など科学的に分かった範囲で説明があれば、感染症への理解は深まり、防御の意識も高まるはずだ。流行の初期と比べ、治療法がどの水準まで進んだのかも具体的に知りたい。

 有識者会議「感染症対策分科会」が現在の感染状況をどのように見ているのか、見解の公表時期がかつてより間が空いている点も気掛かりだ。政府は専門家の分析をすくいとり、示す必要があろう。その際、首都圏中心に偏らず、地方ごとにきめ細やかな目配りを求めたい。

 感染者や家族に対する誹謗[ひぼう]や中傷、差別も社会問題化している。ウィズコロナで息苦しい生活が強いられる中、あってはならないことだ。自治体の首長はそれぞれにメッセージを発しているが、政府こそが率先し、誹謗や差別のない社会環境づくりを呼び掛けていくべきだ。

 菅首相は国民の納得が得られるような丁寧な説明を続けていく方針という。加藤勝信官房長官、西村康稔経済再生担当相ともども国民が知りたい情報を敏感に察知し、メッセージを出し続けてほしい。

 野党は臨時国会での論戦を要求している。実現すれば、感染防止対策や景気浮揚に向けた財源措置、消費税減税などが論点に浮上するだろう。実のある論戦を切に望む。注視することで学び取ることは少なくない。(荒木 英幸)