【第一原発処理水】処分法と風評対策示せ(10月10日)

2020/10/10 09:17

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 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分方針を政府が近く判断する方向で最終調整に入った。「福島県から」、あるいは「福島県のみ」で環境への放出が始まれば、風評が再燃する恐れがある。県内の農林水産業などがこれ以上、負担を強いられることがあってはならない。政府はまず、具体的な処分方法と風評対策を示し、国民の理解を得る努力をすべきだ。

 処分方針決定に向け、政府は四月から計七回の意見聴取会を開いた。多くの団体が環境放出による新たな風評の発生を懸念し、政府に対し具体的な対策を示すよう求めている。これまでに県内の市町村議会からは放出反対や風評対策などを求める意見書の可決が相次ぎ、双葉、大熊両町は原発敷地内での長期保管に反対している。県内外で理解が深まっているとは到底、言えないだろう。

 にもかかわらず八日に都内で開かれた聴取会後、江島潔経済産業副大臣兼原子力災害現地対策本部長は「可及的速やかに、政府としての判断を出さなければならない」と、早期の処分方針決定を示唆し、風評対策については「走りながら確実に対応する」と述べた。風評を相当、甘く考えているのではないか。

 ひとたび、風評が広がれば、打ち消すのは容易ではない。東京食肉市場の枝肉平均価格は原発事故を境に大きく下落し、二〇一一(平成二十三)年八月以降の全頭検査で一頭も基準値超がないにもかかわらず、今も回復しきれていない。対策が後手に回ることなどあり得ない。

 江島副大臣は風評に伴う被害が出た場合、「賠償も含めて政府が責任を持って対応したい」とも述べた。何かあれば金銭で解決すればいいという発想は、九年余りもの間、古里を取り戻すために心血を注いできた被災地の人たちの思いとは、かけ離れているのではないか。市場で評価されない農林水産物を生産する農家や漁業者らは、ものづくりへの誇りを失いかねない。

 政府の小委員会は二月、処分方法として大気への水蒸気放出と海洋放出を「現実的な選択肢」としたが、どこから、どのように放出するかなど詳細は明確にしていない。例えば、処理水を陸上で移送するには、法令に準拠した設備やルートとなる自治体の理解が必要になるが、それは政府が汗をかけば解決できる問題だろう。小欄でたびたび指摘しているが、処理水の処分を「福島県から」、あるいは「福島県のみ」で始めることがあってはならない。(円谷 真路)