生業訴訟最高裁へ 国と東電、住民双方上告

2020/10/14 08:08

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 東京電力福島第一原発事故の被災者約三千八百三十人が国と東電に慰謝料や居住地の放射線量低減を求めた生業(なりわい)訴訟で、国と東電の責任を認めて原告三千五百五十人への賠償計約十億一千万円の支払いを命じた仙台高裁判決を巡り、被告側の国と東電、原告側の住民は十三日、判決内容を不服として上告した。被災者が国を相手取った集団訴訟が最高裁に進むのは初めて。双方の上告により、原発事故の責任を巡る判断は最高裁に委ねられる。


■津波予見判断、救済範囲に不服

 国の訴訟手続きを担当している原子力規制庁の担当者は十三日に記者会見し、仙台高裁判決が「国と東電は福島第一原発への津波到来を予見できた」と認める根拠とした国の地震予測「長期評価」について「信頼性は低く津波を予見できなかった。東電に対策を命じても事故は防げなかった」と主張。判決は法令解釈を誤っており、最高裁の判断を仰ぐ必要があると説明した。

 東電は「判決内容を十分に精査した結果、総合的に判断して上告することとした」とコメントした。

 原告側は控訴審判決を評価していた。国と東電に被災者の早期救済のため上告しないよう要請したが、応じないと判断。対抗策として二審で賠償請求が退けられるなどした四十八人が上告した。今後、残る住民も加わる予定。県庁で記者会見した原告団長の中島孝さん(64)=相馬市=は国と東電の姿勢を「被災者救済に誠実に向き合うことを回避する傲慢(ごうまん)な態度」と憤った。

 弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士は「最高裁に移るのは本意ではなく、国と東電の対応は遺憾だ」と述べた。県北、県中など自主的避難等対象区域に住んでいた原告への賠償を減額した点など高裁判決には課題も残るとした上で「判決の不十分な部分を補うべく、主張立証する」と語った。

 九月三十日の仙台高裁判決は、全国に約三十ある同種訴訟のうち、国を被告に含む訴訟では初の高裁判断だった。上田哲裁判長は国と東電の責任を認めた二〇一七(平成二十九)年十月の一審福島地裁判決を維持し、国と東電は原発の敷地を超える津波の到来を予見できたと判断した。賠償額を一審判決の約五億円から約二倍に上積みした。国の賠償基準「中間指針」で対象に含まれていない会津地方や栃木、宮城両県の一部地域の住民にも賠償を認めるなど救済範囲も広げた。

 原発事故を巡る集団訴訟では、原告の早期救済を理由に国を被告とせず、東電のみに損害賠償を求めた二件の訴訟が既に上告審に進んでいる。

■東京電力福島第一原発事故と生業訴訟を巡る経過

2011年3月11日

▼東日本大震災が発生。東京電力福島第一原発に津波が到達し、1~5号機で全交流電源喪失

同年3月12~15日

▼1、3、4号機で水素爆発

2013年3月

▼原発事故の被災者が国と東電に損害賠償を求めて福島地裁、地裁いわき支部、千葉、東京両地裁に提訴。以降も全国で同様の訴訟が相次ぐ

2017年10月

▼福島地裁判決。国と東電の責任を認め、原告約2900人に計約5億円の賠償を命じる。原告側、被告側双方が控訴

2020年9月30日

▼仙台高裁判決。一審に続いて国と東電の責任を認め、原告3550人に計約10億1000万円の賠償を命じる