林業復興さあ地元で 双葉地方森林組合長 秋元公夫さん

2020/10/19 09:42

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三春町の仮事務所で本所への帰還を伝える通知文書を見つめる秋元さん
三春町の仮事務所で本所への帰還を伝える通知文書を見つめる秋元さん
富岡町小良ケ浜にある双葉地方森林組合の本所
富岡町小良ケ浜にある双葉地方森林組合の本所

 十一月に東京電力福島第一原発事故に伴う移転先から富岡町に戻る双葉地方森林組合は約九年八カ月ぶりの帰還となる。組合長の秋元公夫さん(72)=川内村、県森林組合連合会長=は「地元に帰って双葉郡の森林、林業を再生する」と己を奮い立たせている。

 ■富岡に来月帰還 国への働き掛け継続

 被災後の道のりは平たんではなかった。二〇一一(平成二十三)年四月十三日に田村市の田村森林組合に間借りし、「双葉」の看板を掲げた。放射線の健康への影響が判然としない中、妻と身を寄せた同市常葉町の一軒家には退職を申し出る職員が夜ごと訪れた。

 「山の仕事は続けられない」「家族と県外に逃げる」。胸中を思うと、引き留めるすべはなかった。約二十人いた職員は気付けば二人だけになっていた。

 「組合を存続させるため、できることは全てやる」。賠償・除染を巡る国や東電との交渉、組合員の避難先の把握、職員集めなどに日々、奔走した。復旧復興が進むにつれて増える木材需要を引き受けた。二〇一一年度、前年度の六割に当たる約二億五千万円まで減った収益を、震災前と同じ四億円台まで立て直した。

 三春町にプレハブ事務所を建ててから三年弱が過ぎた二〇一七年四月、富岡町の避難指示解除準備、居住制限両区域が解除された。本所は帰還困難区域のままでも、帰還への一筋の光に感じられた。

 「『いの一番』に富岡に帰る。本所を使わせてほしい」。本所を足場に森林整備を担う決意や重要性を町、国の関係者に説いた。思いは通じ、国が除染などを行う特定復興再生拠点区域(復興拠点)に本所も含まれた。

 敷地と建物の除染が六月に終わり、九年以上手つかずだった設備の修繕や備品の交換を急いでいる。移転費には、蓄えていた東電から組合への賠償金を充てた。「予想以上に手間がかかる」とこぼすが、その声には張りがある。事務所と双葉郡内の現場の往来が楽になり、「職員の就労環境が改善し、組合員の利便性も増す」と期待する。

 ただ、帰還後の事業運営には課題もある。運営を軌道に乗せる上で鍵を握るのは、収入の柱である「ふくしま森林再生事業」。国費を基に市町村が実施し、間伐などの森林整備と放射性物質流出対策を一体で進める。組合は郡内の各町村から受注しているが、帰還困難区域が大半を占める大熊、双葉両町は着手できていない。放射線量の高い地域もあり、林業を営める郡内の森は限られている。本所に戻った後も、森の再生を国に訴え続けるつもりだ。

 十四日、三春町の仮事務所では最後となる理事会を開き、帰還日程を決めた。理事からは異論は出なかった。二十日には全組合員約三千四百人や関係先に移転通知を出す。「ようやく、ここまで来られた。組合の移転を決めた自分には復興の道筋を付ける責任がある」。古里の森と組織を守る使命感が古希を過ぎた体を支える。