海洋放出社会的影響大 放射性物質トリチウム処理水 福島大の小山教授、小委の議論に制約

2020/10/23 08:37

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 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水を巡り、政府が海洋放出を軸に最終調整している中、政府の小委員会委員を務めた小山良太福島大食農学類教授は「(小委員会は)設置された当初から議論内容が制約されていた。このまま決まってしまえば、結論ありきともとられかねない」と疑問を投げ掛ける。その上で「国民的な議論や理解が深まっていない段階で放出すべきではない」と訴える。


 政府は二〇一三(平成二十五)年、汚染水処理対策委員会の下部組織として、処理水の取り扱いについてさまざまな選択肢を評価するタスクフォース(作業部会)を設置した。検討の結果、技術的に実現可能な(1)地層注入(2)海洋放出(3)水蒸気放出(4)水素放出(5)地下埋設-の五つの処分方法を示した。

 作業部会の報告書を基に、処分方法の技術的な観点や風評などの社会的影響を考慮して五つから絞り込む目的で二〇一六年、政府の小委員会が設けられた。

 小山教授によると、約三年間にわたる十七回の会合で、五つの方法以外にも貯蔵継続、処理水の減容化、トリチウムの分離技術などの議論を重ねてきた。福島第一原発敷地外へのタンク増設や処理水の持ち出しの法的課題についても整理した。ただ、「小委員会は処理水をどうするかの議論の場ではなく、あくまでも五つの処分方法の風評など、社会的影響を比較検討すべきという点に制約された」という。

 小委員会は今年二月、海洋や大気への放出を「現実的な選択肢」とした上で、監視体制構築など技術的な面から「海洋放出のほうがより確実に実施できる」と政府に提言した。

 小委員会がまとめた報告書には「地元自治体や農林水産業者をはじめとした幅広い関係者の意見を丁寧に聞きながら責任と決意をもって方針を決定すべき」とある。県内の市町村議会などからは、風評の拡大を懸念して福島第一原発からの海洋放出に強く反対する声が上がっている。小山教授は「(五つの処分方法の中で)海洋放出が最も社会的影響が大きい。国民の理解、周辺諸外国への説明が不十分だ」と政府の姿勢を問う。


■県外処分検討訴え 国、東電に福島市長

 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水を巡り、木幡浩福島市長は二十二日の定例記者会見で「福島第一原発の発電で受益のあった東電管内など全国で負担を分かち合うのが大事だ」と述べ、国や東電に県外処分を検討するよう改めて求めた。

 木幡市長は「福島は原発事故後、風評被害をはじめ多くの負担を背負ってきた」と批判し、県内での処理水放出に反対の姿勢を強調した。県外での放出については「議論が圧倒的に不足している」と指摘し、県外で放出の実証試験を実施すべきと訴えた。

 木幡市長はこれまでも「福島という名の付かない場所での海洋放出が妥当」との考えを示してきた。