第一原発処理水 海洋放出懸念最多5000件超 政府意見公募

2020/10/24 07:55

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 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分を巡り、政府は二十三日、四月から実施してきた意見公募の結果を公表した。海洋放出に懸念を示す意見が五千件を超し、主な意見の中で最多となった。政府は二十七日の閣僚会議で処分方針を正式決定する構えだったが、意見を踏まえた検討に慎重を期すため、今月中の決定を断念し、来月以降に見送る方向で調整に入った。

 意見公募の結果は二十三日、首相官邸で開かれた廃炉・汚染水対策チームの会合で報告された。四月から七月までの募集期間に全国の個人・団体から四千十一件の意見が寄せられた。海外からの意見も数件含まれている。一件で複数の意見を主張しているものも多く、意見ごとに切り分けて集計した。このため、意見の総数は八千件超となる。

 主な意見は【表】の通り。五千件を超える海洋放出への懸念のうち、科学的な安全性を懸念するものが約二千七百件に上った。具体的には、健康への有害性を不安視する意見があった。ただ、トリチウムは自然界に存在し、雨水や水道水にも含まれる。放出される放射線は弱く、紙一枚で遮れる。意見では、こうした性質などへの理解が広がっていない現状が明らかになった。

 「国民の合意が取れていない、時間をかけるべき」、「地元・漁業者が反対している」など、合意プロセスを疑問視したのが約千四百件に上った。「福島や漁業への風評被害が心配」など風評による影響や復興の遅れを心配したのが約千件となり、国民が納得できる議論がなされていない実態が示された。

 処理水の扱いを議論した政府小委員会は今年二月にまとめた報告書で、方針決定に向けて幅広い関係者の意見を丁寧に聞くことを政府に求めていた。

 チーム長を務める梶山弘志経済産業相は二十三日の会合の締めくくりのあいさつで、「(意見に答えるため)何ができるか検討をさらに深める必要がある」と述べた。経済対策を含めた風評被害対策の具体化や国内外への丁寧な情報発信が必要とし、関係省庁副大臣らに対応を指示した。四月から県内外で計七回実施した意見聴取会で自治体や関係団体から寄せられた意見も整理した。

 方針の決定時期を巡っては、政府は二十七日にも廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議を開き、処分方針を決定する方向で調整を進めていた。梶山氏は二十三日の記者会見で「二十七日に政府方針の決定はしない」とした上で、「本日の議論を踏まえて検討を深め、適切なタイミングで結論を出したい」と述べ、一定の期間を設けて政府内で慎重に検討する意向を示した。