【処理水問題】今こそ地元姿勢明確に(10月24日)

2020/10/24 09:31

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 東京電力福島第一原発の放射性物質トリチウムを含む処理水の処分問題で、政府は二十七日とみられていた基本方針の決定を見送った。現状を踏まえれば、当然の対応で、県内からの海洋放出は決して容認できない。一度決まってしまった政府の方針を覆すのは容易でない。県と県議会は地元の意向を訴えるため、今こそ処理水処分に向けた考え方を明確にすべきだ。

 基本方針は今後開く廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議で決まるが、政府は原発敷地内からの海洋放出を基本方針の柱に据えるとみられている。ただ、判断のよりどころになっている報告書をまとめた小委員会では、処理水の敷地外への移送や他の場所での保管などについては、まともに議論されなかったという。

 この九年半余りの間、政府は何をやってきたのか。事前に処分方法を絞り込み、他の方法は何ら具体的な検討をせず、処理水を保管するタンクが二〇二二(令和四)年夏ごろに満杯となると強調する。これでは「結論ありき」「時間切れを狙った」と言われても仕方がないのではないか。

 政府の公募に寄せられた四千件余りの意見のうち処理水の安全性や合意プロセスなど海洋放出への懸念が多数を占めた。こんな状態で原発敷地内から処理水が放出されれば、県全体が新たな風評にさらされるだけでなく、賛否を巡って県民の分断を招く恐れもある。「3・11」からこれまで払ってきた犠牲の上に、さらに大きな犠牲を強いることになるのは明らかだ。

 内堀雅雄知事は十九日の記者会見で、処理水の処分について「風評が最も重要な問題」としながらも、県としての考えは政府方針が決まった後に示すとした。意見書を三度可決している県議会にも方針決定前に改めて自らの考え方を表明する動きはない。核燃料サイクル政策に象徴されるように、国策は一度決まってしまうと、後戻りが困難になる。県民の未来が懸かる重要課題に受け身の対応でいいはずがない。決定後の意思表示となれば、風評対策さえすれば、国の方針を是認したと受け止められかねない。

 福島第一原発を抱える双葉、大熊両町は復興の妨げになるとして、処理水の早期処分を政府に求めている。住民の帰還に向けた取り組みを日々進めている両町の要求は尊重されるべきだ。立地町の思いと、敷地内からの海洋放出に反対する県民の声の双方を十分にくみとった処分方法を再検討する。それが政府の責務だ。「結論ありき」は許されない。(安斎 康史)