【検証 トリチウム水】全国で議論必要 国内外の理解深まらず

2020/11/11 08:01

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の行方を注視する県原子力対策監の角山茂章氏は「処理水について、国内外の理解が深まっていない」として、政府や東電の情報発信の在り方を問う。海洋放出を軸に最終調整している政府に対し、全国各地で議論の場を設ける必要性を訴える。

 角山氏は東電福島第一原発事故発生後、政府や東電が発信してきた放射性物質に関する情報が国内外の多くの人に十分に伝わっていないとみている。

 文部科学省が全国の児童生徒に配布している放射線教育に関する副読本の活用状況は二〇一九年度、小学校の半数にとどまっている。東電が廃炉資料館(富岡町)の展示や広報誌などを通して説明している処理水の情報は、資料館を訪れたり、広報誌に目を通したりする人に限られている。一般の国民が普段の生活の中で処理水の情報に触れる機会が少ないのが現状だ。

 政府が先月公表した処理水の取り扱いに関する意見公募の結果によると、海洋放出に懸念を示す意見が五千件を超え、このうち安全性を懸念するものが約二千七百件に上った。自然界に存在し、雨水や水道水にも含まれるトリチウムから放出される放射線は弱く紙一枚で遮れる。この性質への理解が広がっていない実態が改めて示された。

 角山氏は科学的な安全性を浸透させるためには「生活に身近な視点から分かりやすい説明が不可欠」として、情報を伝える工夫と論理的な説明を尽くすべきと提言する。

 さらに、処理水について国内外の理解を得るには、議論の深まりと広がりの重要性を指摘する。政府主催の意見聴取会でも処分方針の決定に向けて国民的な議論を求める声が相次いだ。松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事が、処理水を大阪湾で放出する可能性に言及していることを例に挙げ、福島だけの限定的な問題ではなく、全国を巻き込んだ議論を求める。

 処理水に関して、政府による分かりやすい説明と意見を集約する場を設け、「国民が納得するまで、理解を広げる努力をしていくべき」と強調する。