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車中避難所3密回避へ コロナ禍、分散に利点 自治体と民間施設駐車場連携

2020/11/30 08:08

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 新型コロナウイルス感染拡大に伴う避難所の「三密」回避で、豪雨や台風などの災害時に民間施設の駐車場を活用した「車中避難所」を設ける動きが県内で出てきた。自治体がスーパーなどを運営する事業者と協定を結び、水害や土砂災害の恐れがない場所にある駐車場を提供。避難者は自宅に被害の危険性がなくなるまで自分の車を止めて車内で過ごす。ただ、車中避難を巡っては避難者の健康維持などが課題となる。

 「避難先を確保できた。まずはひと安心」。福島市御山地区町内会連合会長の西坂忠一さん(76)は地区にある葬祭場の駐車場を見渡した。

 連合会の約千六百五十世帯が暮らす御山地区の一部は土砂災害警戒区域に指定されている。近隣にある自主避難所の地区集会所は、新型コロナの感染防止で定員が四分の一以下の十五人程度に絞られる。学校や公民館などの指定避難所も同様に収容人数が減らされる見通しで、地区内の避難希望者全員が入れない懸念を抱いていた。

 この葬祭場は幹線道路沿いにあり、約百五十台が駐車可能。住民側の提案を受け、市や運営団体などが今月、協定を結んだ。豪雨などで警戒レベル3の「避難準備・高齢者等避難開始」が発令されると営業用のスペースを除いて避難所として駐車場が開放される。

 民間施設を活用した車中避難は、コロナ禍を受けた分散避難の手法の一つとして全国で導入が進む。県内では福島市で葬祭場のほか、スーパー、ホームセンターなどの計十九店舗、郡山市でもパチンコ店と大型商業施設の計十店舗の駐車場が有事の際の避難所となる。いわき市も設置に向け協議に入った。

 感染拡大を受け、県内ではホテル・旅館などの宿泊施設での受け入れ体制整備も進むが、宿泊施設は感染による重症化リスクが高い妊産婦や高齢者が中心。商業施設の駐車場は、住民の生活に身近で、通い慣れている場合が多く、「災害時にスムーズに移動できる」(福島市危機管理室)との利点もある。


■住民の健康維持課題 水分補給、手足の運動必須

 車中避難で特に懸念されるのが二〇一六(平成二十八)年の熊本地震でも搬送者が相次いだエコノミークラス症候群だ。突然死の恐れもあり、県は車中避難所の設置に当たっては「避難者の小まめな水分補給や、血栓を防ぐための手足などの運動が欠かせない」と注意を喚起。設置する市などは健康被害防止対策の避難者への有効な周知方法を探る。

 さらに、車中避難所を設ける店舗の営業時間外は店舗内のトイレを使えない場合があるほか、行政の職員らが配置されず、毛布などの物資提供も難しい。

 災害情報学が専門の佐々木康文福島大行政政策学類教授は「感染への不安から避難をためらう状況は避けなければならない」と車中避難の有効性を認めた上で、「平時からどこに避難するかの計画を立てるなど、しっかり備えるのが重要」と強調した。