新型コロナ 迫るワクチン一般接種 福島県内市町村、会場や人員準備手探り

2021/01/09 08:31

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 国内で新型コロナウイルスのワクチン接種が三月下旬にも一般を対象に始まるとみられる中、県内の市町村は接種会場やスタッフの確保など体制づくりを模索する。まだワクチンが国内で承認されていないため、国から具体的な情報が示されておらず、市町村は前例のない大規模な接種に向け、手探りで準備に当たる。


■集団か個別か

 ワクチン接種は三月下旬に、優先対象の六十五歳以上の高齢者、四月以降、他の人に順次広がる見通しで、一般接種は市町村が担当する。厚生労働省は昨年十二月、オンラインで自治体向け説明会を開き、「集団」か「個別」かの接種方法については、それぞれの地域の実情に応じて選択するよう促した。

 会津若松市は地元医師会や医療機関と接種方法を調整しているが、現時点で決まっていない。感染予防のため、集団接種の場合、ある程度広い会場の確保が不可欠になる。市健康増進課の新井田昭一課長は「できるだけ早く具体化させたい」と検討を急ぐ。

 古殿町は町内の医療機関が一カ所のみで、町健康管理センターの担当者は「通常診療も行わなければならず、町民全員の接種は難しい」と明かす。今後、集団、個別のどちらを採用するかを決めるが「情報が少なく判断が難しい。早く細かい情報を提供してほしい」と訴える。


■零下75度

 政府は全国民分のワクチンを確保し、費用を全額負担する。二月下旬に先行して始まる医療従事者へのワクチン接種は都道府県が調整する。一般を担当する市町村にとって、短期間で大人数に接種する体制づくりが課題となっている。

 郡山市は単純計算で市民三十三万人に二回、計六十六万回の接種となる。承認申請中の米ファイザー製のワクチンは零下七五度の低温管理が求められ、解凍後の保管は最大で五日。冷凍庫は国から支給されるが、何台が、どのタイミングで提供されるか分からない。 新設する市ワクチン接種プロジェクトチームでプロジェクトリーダーを務める塚原太郎市保健所長は「三十年以上、集団接種の経験がない。この一カ月間で接種体制を一から考えなくてはならない」と気をもむ。


■人手不足

 医療従事者や自治体職員の確保も課題だ。

 西会津町は町内の医療機関の常勤医が二人に限られる。町は近隣市町村と医師らの広域連携を図れないか模索している。担当者は「現状の医療従事者だけでは足りない。国、県は人員確保策を打ち出してほしい」と切実な声を上げる。

 会津坂下町の担当者は「ワクチン対応は年度末の繁忙期と重なる。全国一律のスケジュールに対応できるだろうか」と不安を口にした。


■国に対応策求める 被災地域職員、準備に不安


 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、東京電力福島第一原発事故で避難区域が設定された市町村は、どのような方法で住民の接種を実施できるか頭を悩ませている。医師不足など地域の慢性的な課題を抱え、避難者も全国各地に点在している中、接種の進め方に関して不安は少なくない。国からは現時点で具体的な指針などは明らかにされておらず、担当者は「早急に対応策を示してほしい」と訴えている。


■全国に点在

 「接種は避難先の自治体にお願いするしかない」。原発事故で全町避難が続く双葉町の担当者は苦しい実情を打ち明ける。

 町民五千八百人は全国各地に避難を余儀なくされている。県外避難者の健診は避難先の指定医療機関で受診する仕組みが整っているが、全国でほぼ同時に始まる新型コロナのワクチン接種も同じように適用されるかは未知数だ。

 町は、優先接種対象の高齢者ら向けに接種に必要となる「接種券」の配布準備を進めているが、現状ではどこの医療機関で接種できるかは不明なまま。医療機関が決まったとしても、避難先の自治体で接種を待つ地域住民は多いとみられ、どのタイミングで順番が回ってくるのかは見通せない。担当者は「接種時期が遅れるなど町民が不利益を被ることがあってはならず、対策を講じていきたい」と思案する。

 同じく多くの町民が県内外に避難している大熊町。県内避難者の場合、会津若松、郡山、いわきの各市などで集団検診を実施している。ただ、冷凍保存など扱いに課題の多い新型コロナのワクチン接種では同じ様に対応するのは難しいとみられ、県外と同様に避難先での個別接種が現実的だとみている。


■医療体制

 避難区域が設定された地域では慢性的な医師不足に陥っている上、帰還住民の高齢化率も高く、優先接種を集中的に対応できるかという懸念がある。

 川内村は村内唯一の診療所・村国民健康保険診療所と打ち合わせを行うなど準備を始めているが、常勤の医師は一人のみ。ワクチン接種は一般の診療と掛け持ちで実施しなければならず、一日に接種できる人数は限られる。

 原発事故の避難により少子高齢化が加速し、六十五歳以上の高齢者の割合は昨年十二月一日現在で42・9%に上る。担当者は「高齢者にはできるだけ早く接種してもらえるよう万全の体制を整えたい。国の情報はすぐに準備に反映させる」と作業を進めている。


■広域調整

 県は新型コロナワクチン接種については、避難先で接種できるよう国に求める方針だ。避難先で不都合がないよう厚生労働省や各都道府県と連絡を取りながら、具体的な実施体制の構築を急ぐ。

 現在、各市町村の担当者から現時点での悩みなどを聞き取っている。二月下旬から先行して行われる見通しの医療従事者への接種で得られたノウハウを反映させていく。県の担当者は「課題を浮き彫りにし、しっかり対応する」とし、広域調整に努める考えを示した。