【県の新知財戦略】若者への教育に力を(4月3日)

2021/04/03 09:18

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 県は今夏にも、県内中小企業の知的財産(知財)の取得・活用を加速させ、経営基盤の強化につなげるため、関係機関による「ふくしま知財戦略協議会(仮称)」を発足させる。特許や商標が新たな事業展開の呼び水となる可能性を経営者に伝え、関連する活動を後押しする方針だ。次代の産業づくりに向けては若い世代への啓発活動が何より重要になる。児童から大学生までを対象に、知財教育を積極的に進めてほしい。

 いわき市の医療機器製造・販売「シンテック」の赤津和三社長は十数年前、性能の良い電波腕時計の内蔵アンテナを製品化した。しかし、権利の保護まで気が回らず、製造ノウハウが他社に奪われた。現在は三十を超える特許を取得して社業を伸ばしているが、苦い経験を基に「子どもの時分からものの見方を鍛え、知財に興味を持たせる教育が求められる」と訴えている。

 協議会には市町村、県発明協会、県内金融機関、福島、会津両大などに加え、特許庁や日本弁理士会が名を連ねる見込みだ。参加団体の知見を生かし、知財の種類や重要性をはじめ、取得の方法、活用法までを網羅した児童、中学生、高校生、大学生向けのカリキュラムをそれぞれ作成し、学校で教える機会を設けてもらいたい。

 本紙は知財全般にわたる話題を紹介する「知財ノート」を毎週経済面に、主に商標や商品開発をテーマにした「知財の種」を月に一度ジュニア新聞に掲載している。いずれも現役の弁理士が分かりやすく制度内容や仕組みについて解説しており、教材としても活用できるだろう。

 知財教育を総合的な産業教育に発展させたい。特許の取得は決してゴールでない。権利化した技術を生かして人の役に立つ商品を世に送り、利益を得て会社を回していくことこそ真の目標と言える。市場の動向をつかみ、販路を広げるのが最も難しいとされる。子どものうちから、経済の仕組みや起業の魅力と課題を幅広く教えるなどして、有望な産業人材を育成していく必要がある。

 首都圏に隣接する県内には部品製造・加工などの下請け企業が多く、知財を独自の経営に生かすノウハウが十分に浸透していないと指摘される。県には「知財はなぜ重要なのか」「特許取得には費用が発生するので、及び腰になる」という事業所からの声が届いている。こうした状況下では、新たに設ける協議会の必要性を丁寧に説いて回り、企業の理解を得る活動から始めるべきだ。(菅野龍太)