首相、海洋放出の方向 第一原発処理水 近日中に判断

2021/04/08 08:23

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 東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分を巡り、菅義偉首相は七日、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長と野崎哲県漁連会長と官邸で面会し、「専門家の提言を踏まえ決定したい」として処分方法を海洋放出とする方向性を示した。岸会長と野崎会長は海洋放出について、改めて反対の立場を表明。政府は近日中に判断する意向で、十三日にも関係閣僚会議を開く方向で調整している。海洋放出を強行するのか、重大局面を迎えた。


■全漁連、県漁連会長と面会

 菅首相と岸会長、野崎会長をはじめ全漁連の役員らの会談は非公開で行われた。岸会長によると、菅首相は福島第一原発の着実な廃炉の進展が復興の前提とした上で、「海洋放出がより確実かつ現実的な方法であると専門家の提言があるのを踏まえながら政府の方針を決定していきたい」と述べたという。

 一方、岸会長はこれまで漁業者の総意として海洋放出に反対してきた経緯を説明。風評被害への懸念に加え、新型コロナウイルス感染拡大に伴う魚介類の消費低迷、安全確保に関する東京電力の一連の不祥事を理由に挙げ、「反対の考えはいささかも変わるものではない」と述べた。野崎会長も「(処理水の)海洋放出には反対するとの説明をした」と地元としても受け入れない考えを改めて強調した。

 一方、岸会長は「反対の立場は変わらない」と前置きした上で、処理水を処分するに当たっては(1)漁業者、国民への説明(2)風評被害への対応(3)処理水の安全性の担保についての提示(4)福島県をはじめ全国の漁業者が漁業を継続するための方策(5)敷地内におけるさらなるタンクの増設や新たな処理・保管方法などの検討-を国の責任で取り組むよう菅首相に求めたことも明らかにした。


■地元の強い反対認識

 会談終了後、菅首相は官邸で記者団の取材に応じた。海洋放出に対し地元で強い反対があると記者団に質問され、「福島県には、そういう意見が多いと認識している」と答えた。会談について「六年間かけた検討の中での有識者の評価を伝えた。本日の面談などを踏まえ、近日中に(処理水の処分方法を)判断したい」と述べた。風評被害があった場合の賠償について問われると「仮定のことについては控えたいが、いずれにせよ風評被害は最小限にする努力は必要」と述べるにとどめた。

 梶山弘志経済産業相は面会に同席した後、記者会見し、漁業者らへの対応について「引き続き説明、説得をしていきたい」との考えを示した。方針を決める関係閣僚会議の開催時期を問われると「今のところ未定だ」と答えた。

 福島第一原発の処理水を巡っては、東電は、タンク容量が二〇二二(令和四)年夏ごろに満杯になると試算し、今年一月の記者会見では、昨年の降水状況などから満杯時期が二二年秋以降になる可能性があると明らかにした。放出が決まれば、準備に二年程度かかるとされる。

 政府は廃炉の着実な推進に向けて処理方法の早期決定を目指していたが、昨年秋に全漁連や県漁連が海洋放出に強い反対の考えを示していたことから、判断を先送りしていた。