【処理水問題】信頼確保できるのか(4月10日)

2021/04/10 09:13

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 東京電力福島第一原発にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について、政府は海洋放出する方針を十三日にも正式決定する見通しとなった。実施主体となる東電は福島第一原発、新潟県の柏崎刈羽原発で不祥事が相次いでいる。県民の反発に加え、東電に対する信頼が失墜している中、なぜ方針の決定を強行するのか。政府への不信感は募るばかりだ。

 相次ぐ不祥事の中でも柏崎刈羽原発の核物質防護不備問題では、原子力規制委員会が十四日の定例会合で同原発の核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出す見込みとなっている。同原発では、昨年三月以降、計十五カ所でテロ目的などの侵入を検知する設備が故障し、代替措置も不十分だった。同僚のIDカードを使った所員による中央制御室への不正入室も発覚した。商業炉に対する規制委の措置命令は初めてで、東電に原発を扱う資格があるのかを問われているのに等しい。

 本県の福島第二原発では二〇一六(平成二十八)年に侵入検知器の警報機能を鳴らないように設定し、規制委から核物質防護規定の順守義務違反として厳重注意の文書を受けている。当時、東電は再発防止策の徹底を約束したが、核燃料を扱う重要施設の安全対策が各原発に水平展開されていなかったことを示している。

 さらに、廃炉作業を進めている福島第一原発でも問題が発覚している。3号機の原子炉建屋に設置した地震計二基が故障していたのにもかかわらず、修理せずに放置していた。このため二月の本県沖地震のデータを記録できなかった。今月に入り、構内のコンテナ約四千基の内容物データが不明となっていることも判明した。

 各原発が立地する福島、新潟の住民ばかりでなく、多くの国民が東電は過去の教訓を生かせず、会社の体質改善もできていないと感じているに違いない。こんな状態の中で、政府は方針を決め、東電に海洋放出に向けた施設整備などを委ねられるのだろうか。敷地内からの海洋放出を強行すれば、農林水産業や観光業をはじめとする県民生活にさらなる負担がのしかかる。実施主体の東電が信頼できなければ、その影響が増幅して押し寄せる恐れがある。

 「国策はブルドーザーのように進められる」。政府が原発事業の軸とする核燃料サイクル政策について批判した元知事の言葉を思い出す。処理水の処分問題も柔軟に見直す姿勢がなければ、復興に向かう被災地は国策に押しつぶされてしまう。(安斎康史)