避難で要介護リスク1・6倍 福島県立医科大学が65歳以上男性を調査 福島県

2021/06/23 21:16

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 福島医大医学部(福島県福島市)の研究グループは、東京電力福島第一原発事故に伴い南相馬市から避難を余儀なくされた当時65歳以上だった男性が新たに要介護認定を受けるリスクは、避難しなかった同年齢の男性に比べ1・6倍に上るとの調査結果をまとめた。家族との離散や地域住民との交流の喪失が要介護リスクの上昇につながった可能性があると分析。原発事故が避難者の健康に悪影響を及ぼしている実態が浮き彫りとなった。

 福島医大が23日、研究論文を発表した。研究グループはこの傾向が南相馬市特有ではなく、他の避難市町村にも該当すると推測している。避難の有無によって要介護リスクに差が生じるとの結論を導いた論文は過去に例がないとしている。

 研究では、東日本大震災が発生した2011(平成23)年3月11日時点と、その5年後の2016年6月1日時点の両方で南相馬市に住民登録していた人のデータを調査。震災当時65歳以上で要介護認定を受けていなかった男性5557人のうち、2016年12月までに、365人が要介護認定を受けていた。

 365人について避難の有無以外で要介護リスクに影響を与える可能性がある年齢や同居家族の有無を考慮した上で詳しく解析した。その結果、避難区域(旧警戒区域、旧計画的避難区域)内に住んでいたグループの要介護リスクは、避難区域外に住んでいたグループの1・61倍に上った。

 研究グループは避難によって同居家族と離れ離れとなったり、地域住民との交流が減ったりすることで認知機能の低下や運動不足が起き、介護が必要な状態に陥りやすくなった可能性があると分析している。調査結果を踏まえ、避難を余儀なくされた高齢者に対し、特に手厚い介護予防策が必要だと指摘している。

 研究をリードした森山信彰公衆衛生学講座学内講師(39)は「地域との関わりを持ちたがらない人も含め、住民の健康状態を気に掛ける体制をいかに構築するかが大切。災害に備え、普段から地域内のつながりを強めておくことも欠かせない」と話した。


■女性は1.18倍

 同様の条件で女性を調べた結果、避難区域内に住んでいたグループの要介護のリスクは避難区域外に住んでいたグループの1・18倍だった。「明らかに避難と要介護リスクの関連があるとは言い切れない」としている。環境の変化が生活の自立度に及ぼす影響は女性に比べて男性が高かった可能性がある。