会津の怪談(7月27日)

2021/07/27 09:21

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 一八八八(明治二十一)年七月十九日か二十日の午前九時ごろだったという。数日前に噴火した磐梯山から黒雲が上がり、中に六メートル余りの鬼が黒い棒を持っているのが見えた。そして北塩原村の小野川の集落へと近づいてきたから大騒ぎになった▼昭和初期にまとめられ、会津若松市の会津図書館が所蔵する私家版「會津怪談集」にある話だ。人々が鉄砲で応戦しようとすると、吾妻山の東に去った。「事実」だとして目撃者二人の名前も記されている。真偽はともかく、本当に何かが起きたのでは…と想像させられる▼夏は怪談の季節だ。会津地方には不可思議な伝承、記録が数多く残っている。生きる上での戒めなどが込められ、人々の暮らしに寄り添ってきた。昔の人が科学に疎かったから、だけではないだろう。現代人もコロナ禍の中で妖怪アマビエに注目した。時代を超えて心を引きつける何かがある▼市内では、夜間に街なかを歩くとスマートフォンから怪しい音声などが流れるイベントを開催中だ。何かと不自由を強いられる毎日だが、考えても簡単に解決しない。しばし不思議の世界をさまよえば、いら立つ心と体が少しは静まるかもしれない。