【岸田新総裁】政権公約示し、信を問え(9月30日)

2021/09/30 09:00

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 菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選で岸田文雄前政調会長が新総裁に選ばれた。十月四日召集の臨時国会で首相指名を受ける。山積する諸課題にいかに取り組むのか。総裁選では判然としなかった具体策を公約として示し、間もなく行われる衆院選で国民の信を問わねばなるまい。

 総裁選では四人の候補者がオンライン討論会で論戦を交わした。テーマは新型コロナウイルス対応や年金制度改革、安全保障、エネルギーなど多岐に及んだ。いずれも避けて通れない重要課題だが、総じて見れば主張の実現に向けた道筋が見えず、生煮えといった印象も残った。

 最優先は新型コロナ対策の「出口戦略」をどう描くかだ。政府は十九都道府県に発令している新型コロナウイルス緊急事態宣言を三十日で全面解除し、本県など八県に適用中のまん延防止等重点措置も全て終了する。感染対策と経済活動の両立に向けた行動制限緩和の進め方は国民の最大の関心事といえよう。

 総裁選で岸田氏は出口戦略に関し「普通の経済や社会活動を取り戻す道筋をつくりたい」と語り、経済対策を用意する考えを明らかにした。感染拡大の長期化で、地域経済を支える飲食業や観光業、それに連なる産業は苦境に立たされている。実効性のある対策を早急に示す必要がある。

 本県にとって注視すべきは東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興と廃炉に向けた対応だ。総裁選ではあまり取り上げられなかったが、岸田氏は自民党県連との対話で「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の復興なし。福島の明日を切り開けるよう戦い抜く」と述べた。

 福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水を巡り、菅政権は漁業者や県民の反対を押し切る形で海洋放出方針を決めた。政府への不信感は根強い。掛け声だけではなく、処理水の処分方針の見直しを含め、復興を加速させるための地に足のついた政策を求めたい。

 総裁選では人口減や地域活性化など地方が抱える問題に関する議論は深まらなかった。少子高齢化や財政難といった喫緊の課題に直面する自治体関係者から「地方の危機感を本当に分かっているのか」と冷めた声が出るのも当然だろう。

 安倍・菅両政権は「地方創生」を地方政策の看板に掲げたが、東京一極集中の大きな流れは変えられなかった。目指すべき「国の姿」を示し、地方の実情に沿った政策を講じるべきだ。(紺野 正人)