福島県の「県民割」取れない 一部施設で発行できず 予約に上限

2021/10/03 10:33

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電話対応などに追われる渡部さん(右)=2日、会津若松市・くつろぎ宿千代滝・新滝
電話対応などに追われる渡部さん(右)=2日、会津若松市・くつろぎ宿千代滝・新滝

 福島県が1日に予約受け付けを始めた宿泊割引事業「県民割プラス」を巡り、少なくとも40の宿泊施設の予約完了後に割引クーポンが発行されなくなり、現場に混乱が生じていることが2日分かった。宿ごとに設定された割引の補助上限額に達すると発行を停止する仕組みが宿側に十分に伝わっておらず、上限に達した後も予約を受け付けてしまっているのが原因。「予約を済ませたのにクーポンが発行されない」などと宿に問い合わせが殺到している。県は周知を徹底する。

 宿に電話をして予約する場合や宿の公式サイトから申し込む場合は、予約後に県民割プラスの特設サイトで割引クーポンの発行を受ける必要がある。ところが今回は、割引を受けられる前提で予約を済ませた人が、その後にクーポンが発行されなくなり、宿泊施設に苦情が寄せられるなどの事案が生じている。

 県は宿泊施設ごとに割引の補助上限額を設定しており、上限に達すると、自動的にクーポンが発行されなくなる仕組み。県はこの仕組みを宿泊施設向けのサイト内に掲載していたが、、十分に周知されておらず、上限額に達した後も予約を受け付けているケースが相次いでいる。

 宿泊施設からは「重要な情報にもかかわらず、周知が足りない」との声が出ている。

 県によると、2日正午時点で少なくとも40の宿泊施設のクーポンが発行されなくなる事象が発生。県は宿泊施設の部屋数などを踏まえて上限額を設定しており、高価格帯かつ部屋数が少ない宿を中心に起きているという。

 県の担当者は福島民報社の取材に対し、予約の仕組み自体に問題はないとした上で、「同様の事象がこれ以上起きないよう、宿泊施設に改めて周知していきたい」と語った。予約完了後にクーポンが発行されなかった人は、割引を受けずに宿泊するか、キャンセルすることになるという。

 県民割プラスは県民限定の宿泊割引事業。税込み5000円以上の県内宿泊を対象に、料金に応じて2500円から最大1万円を割り引く。


■苦情100件以上

 県民割プラスの予約受け付けが始まった1日の夕方、福島県会津若松市の東山温泉にある「くつろぎ宿千代滝・新滝」に1人の予約客から「クーポンが取れない」と電話が入った。その後も同様の問い合わせが相次いだ。2日昼までに100件以上の苦情などが寄せられ、社員は対応に追われた。

 取締役マーケティング部長の渡部一貴さん(46)は「突然の出来事に現場は戸惑った。現状をどう説明したらいいのかすら分からなかった」と困惑する。旅行会社を通じた予約が主だった前回の県民割と比べ、今回は予約方法が大きく異なる。施設ごとに割り振られた補助の上限額に関する県からの説明が現場に十分に伝わっていなかったと感じている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で市内への修学旅行の中止・延期が相次ぎ、9月の売り上げは例年の4割程度だった。県民割プラスを弾みにして、今月からの集客に大きな期待を寄せていた。しかし、出ばなをくじかれた格好となり、すでに予約客のキャンセルも出ている。渡部さんは「お客さまとの信頼関係が崩れかねず、今後の集客にも影響を及ぼすかもしれない」と心配する。

 須賀川市の温泉旅館「おとぎの宿米屋」では、1日だけで10月分の県民割の予約枠がほぼ埋まった。電話やインターネットサイトから上限の約3倍に当たる予約が入った。3分の2は割引クーポンを発行できない状況となっている。

 従業員が登録を進めるうちに、補助の上限があることに気が付いた。県が示したガイドラインに上限の記載があるのを認識したのはその後だった。前回の県民割とは、宿側が予約状況を確認するサイトでの上限の表示方法も異なっていた。予約担当者は「お客様の不利益にならないようにしなくては」と対応に苦慮する。

 いわき市の主婦若松尚子さん(48)は、県民割プラスを活用した旅行を考えている。「予算や制度の周知など体制を十分に整えてスタートしてほしかった」と話した。