【ドラえもん展】現代アートは良き教材(10月14日)

2021/10/14 09:29

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 「THE ドラえもん展 FUKUSHIMA 2021」が福島市の県立美術館で開かれている。美術の進化は著しい。多様化する表現技法によって漫画の世界から飛び出したドラえもんが現代アートの魅力を教えてくれる。

 展覧会には絵画、映像、写真、立体物など約四十点が並ぶ。国内外で活躍する二十八組の作家が「あなたのドラえもんをつくってください」との依頼を受けて制作した。どの作品も独自の発想と技法が際立つ。高さが二・六メートルもあるピンク色のドラえもん像、巨大なキャンバスにキャラクターを敷き詰めるように描いた絵画、漫画を印刷した紙で作ったドレスなど作家の個性がみなぎる。

 二〇〇二(平成十四)年から全国巡回した「THE ドラえもん展」の第二弾に当たる。前回はなかったプロジェクションマッピングや3Dプリンターを駆使した作品が登場した。技術の発達が表現技法を広げた。展示作品は一部を除いて自由に撮影でき、新たな楽しみ方となった。背景にはスマートフォンや会員制交流サイト(SNS)の普及がある。

 現代アートの誕生は約百年前にさかのぼるという。横に倒した男性用便器が米国の展覧会に出品されたのが始まりとの説がある。アートと認められず、展示されなかったが、従来の美の概念にとらわれない発想が反響を呼んだ。その後、作者の主義・主張が込められた美術作品が次々と登場する。

 ここ数年の表現技法の進展は、作者のメッセージを鑑賞者に分かりやすく伝えることを可能にした。しかも、今回の展覧会は誰もが知っている国民的キャラクターが主役だ。見る側は心理的な抵抗を受けずに、作家の思いを受け止められるだろう。こうした意味で現代アートに触れる絶好の機会ともいえる。

 県内の学校からは見学の申し込みが相次いでいる。専門家によると、子どもたちに作品の解説はいらない。「何を表しているのか」「何がすごいのか」などの疑問を持たせ、自分なりの答えを出させる。それが大切だという。考える力を養う。正解は一つだけではない。人によって違っていいのだ。

 最近は現代アートをビジネス教育に生かす動きもある。新しい価値やアイデアをどのように見いだすのか。常識や前例を疑うことが新境地を切り開く第一歩となるのではないか。展覧会は十一月二十三日まで開いている。知的好奇心を高め、創造力を育む芸術の秋にしたい。(角田 守良)