衆院選2021

県内選挙区直前情勢(上)【2021ふくしま衆院選】

2021/10/17 19:14

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 十九日公示、三十一日投開票で行われる衆院選で、県内は五小選挙区全てで自民党候補と野党統一候補の一騎打ちの構図が固まった。一九九六(平成八)年の小選挙区比例代表並立制導入以来、初めてで、与野党の前哨戦が熱を帯びてきた。新内閣発足の勢いで政権の基盤固めを狙う与党に対し、政権交代を目指す野党は共闘による選挙協力で対抗する。公示直前の情勢を追う。(文中敬称略)


■2区 自民、後援会フル稼働 立民、知名度向上懸命

 自民党の前職根本匠(70)は衆院解散から一夜明けた十五日、郡山市に戻り、支持者にあいさつ回りをした。「農林水産業の先端技術導入やアフターコロナを見据えた経済対策が重要だ」と地域活性化への思いを語った。

 厚生労働相や復興相を歴任してきた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの本県復興をけん引してきた自負がある。政策立案力と実行力を前面に打ち出し、九選を目指す構えだ。

 一方で、野党候補が一本化されたため、根本よりも四十一歳下の立憲民主党の新人馬場雄基(29)との初顔合わせとなる。野党の選挙協力に加え、若い世代の立候補が投票動向にどう影響するかが読みにくいと陣営はみている。二〇一七年十月の前回衆院選県内選挙区の結果を単純計算すると、明確な野党票は計七万八千票で、根本の約九万七千票と比べ約二万票差となる。

 岸田文雄首相の出身派閥の事務総長も務める。派閥や本県関係の国会議員の応援で各地を飛び回る選挙戦となる。公明党との連携を強め、五百超の後援会をフル稼働させ足場を固める戦略を描く。

   ◇  ◇

 「われわれ、若い世代が震災と原発事故からの復興を見届けなければならない」。立民の馬場は二十九歳の誕生日を迎えた十五日朝、郡山市のJR郡山駅前で声を張った。

 これまでに選挙に立候補した経験はなく、初陣が国政選挙となる。後援会組織を七月に立ち上げ、党や連合福島を中心とした選挙態勢づくりを進めてきた。元知事や党県連幹部らも加わり、それぞれの人脈をたどり知名度の向上に努める。自転車で選挙区内を走り回り、若さと行動力を売り込んでいる。

 共産党候補の擁立取り下げによって野党統一候補となった。ただ、対戦相手は閣僚経験者だ。小選挙区で前職と競り合うことで、比例東北での復活当選の可能性も高まると陣営はみている。そのためには野党の選挙協力が欠かせない。

 ただ、立民や共産、国民民主党は消費税を5%に引き下げる経済政策では一致しているが、エネルギー政策や安全保障などを巡る政策ではスタンスが異なる。陣営は十七日、市民団体が主催する街頭演説会で、野党各党との連携を強くアピールする考えだ。


【2区】

衆院選県内選挙区の立候補予定者

根本  匠 70 自民 前(8)

馬場 雄基 29 立民 新


2017年衆院選県内選挙区の結果

当 96,892 根本  匠 66 自民

◎ 59,377 岡部 光規 49 希望

  18,279 平  善彦 65 共産

   9,685 西村 恵美 54 維新

※敬称略。左から氏名、年齢、所属政党の順。前は前職、新は新人。丸数字は当選回数。◎は法定得票数獲得者


■5区 自民、保守層支持固め 共産、共闘構築に全力

 八選を目指す自民党の前職吉野正芳(73)は十五日、いわき市内の山あいの集落を回り「双葉郡に国際教育研究拠点を整備し、浜通り全体の産業と教育の振興につなげたい」と復興施策を訴えた。

 一方、政府が決定した東京電力福島第一原発の処理水海洋放出方針は、与党にとっても喫緊の課題だ。5区では漁業者を中心に、新たな風評被害の発生への懸念が根強い。吉野は、徹底した風評対策と確実な賠償を政策に掲げる。ただ、衆院解散から十七日後に投開票となる戦後最短の短期決戦となったため、有権者の理解を十分に得られるかが焦点だ。

 地盤のいわき市は県内で最も長く新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置が適用された。感染予防の観点から大規模な総決起大会や集会は開かず、復興施策やコロナ対策への考えを記した新聞折り込みチラシを用意した。浮動票の掘り起こしが狙いだ。

 野党候補が共産党の新人熊谷智(41)に一本化されたとはいえ、政策面の食い違いは「野党共闘の弱点」と吉野陣営はみる。自公政権の継続を訴え、保守層の支持固めを目指す。

   ◇  ◇

 共産の熊谷は県内小選挙区で共産初の野党統一候補となった。立憲民主党が新人の擁立を取り下げたためだ。ただ、この候補者調整で「しこり」が残った。立民の最大支援団体で「反自民・非共産」を政治方針に掲げる連合福島は、5区の組合員約一万五千人について自主投票とした。熊谷は、組合員からの票をどこまで得られるか不透明だ。

 二〇一七年十月の前回衆院選県内選挙区の結果に基づき、希望、共産、社民の野党票を足すと計七万五千票に上り、当選した吉野の約八万六千票に迫る。

 熊谷は十五日、いわき市で友好団体などを訪れ、「東京電力福島第一原発事故の被災地から原発再稼働中止を訴えたい」と語った。

 福島第一原発の処理水について、共産は「汚染水」と呼び海洋放出に反対している。一方、共闘する国民民主党は科学的な安全性の確認を条件に放出を容認する姿勢で、野党間の対応は必ずしも一致していない。こうした違いを超え共闘体制を強固にするため、陣営は各党の橋渡し役となる市民団体「ふくしま県市民連合」と政策協定を十七日に結ぶ。


【5区】

衆院選県内選挙区の立候補予定者

吉野 正芳 73 自民 前(7)

熊谷  智 41 共産 新


2017年衆院選県内選挙区の結果

当 86,461 吉野 正芳 69 自民

◎ 51,478 吉田  泉 68 希望

  16,154 熊谷  智 37 共産

   7,186 遠藤 陽子 67 社民

※敬称略。左から氏名、年齢、所属政党の順。前は前職、新は新人。丸数字は当選回数。◎は法定得票数獲得者