福島市長選は現職の木幡浩氏が再選を果たした。告示日前日に新人が立候補を表明し、「想定外」(木幡陣営)の展開となった選挙戦で、市民は市政の継続を望み、新型コロナウイルスの感染防止策や東日本大震災、東京電力福島第一原発事故からの復興に向けたかじ取りを木幡氏に託した。公約で掲げた各種政策を着実に実現し、県都の一層の発展につなげられるのか。二期目で真価が問われる。
木幡氏は選挙戦で「コロナを越えて希望の未来を!!」をスローガンに掲げた。県内の新型コロナの感染状況は落ち着いてはいるものの、「第六波」が懸念されている。経済の再生を図りながら、市民の健康や命をどう守っていくかは喫緊の課題だ。
市の新型コロナワクチンの一回目、二回目の接種を巡っては、電話がなかなかつながらず予約ができないとの問い合わせが殺到したり、インターネットと電話の予約開始日が異なったりして市民の間に不公平感が広がった。三回目は円滑な予約と計画的でスピード感のある接種が求められる。また、幅広くPCR検査などを実施し、感染の早期発見と抑制につなげるためには、全国の先駆けにもなった医療資材の提供など局面に応じた施策を講じ、医療機関との連携を強化する必要がある。
総務省出身で復興庁福島復興局長を務めた木幡氏には第二期復興・創生期間に入った県内の再生をけん引してほしい。震災と原発事故に伴う風評は農林水産業を中心にいまだに残っている。払拭[ふっしょく]への取り組みを粘り強く続けるとともに、震災や二〇一九(令和元)年の台風19号を教訓にした災害に強いまちづくりを進め、市民が安全・安心を実感できる生活環境を実現しなければなるまい。
木幡氏は一期目の実績をまとめた政策集で、保育所の待機児童の解消に「公約達成」と記す。認可保育施設を増やす政策と保育士確保に力を入れ、二〇一七(平成二十九)年十月に県内最多の二百五十人だった待機児童は、二〇二一年四月にゼロになった。とはいえ、入所状況を見ると、希望の施設に入れず、認可外施設に通うなどする園児は百三十人弱に上る。人口減少を見据えれば移住・定住の際に選ばれる都市を目指し、子育て環境充実への取り組みを加速させるべきだろう。
JR福島駅前の旧中合跡地など中心市街地の活性化や高速交通網の充実を踏まえた他県との連携も課題だ。市民の声に耳を傾け、地に足のついた施策の実現に手腕を発揮してほしい。(円谷 真路)