江戸時代、マンボウはいわき地方の名産品の一つだった。当時は「浮亀」などと表記されていた。海面に横になって漂う習性からそう呼ばれていたという。磐城平藩や湯長谷藩から幕府への献上品とされていた。古文書に記録が残されている▼寺子屋などで教科書として使われていた別の古文書がある。伊達郡掛田村(現伊達市霊山)の旧家に伝わる写本で、そこには、いわき地方の特産は「泥亀[すっぽん]」であると紹介されている。県歴史資料館の職員は書き間違いか、写した人の勘違いではないかと推察する▼福島市の資料館で新公開史料展が開催されている。県内各地に残された文書や絵図などが並ぶ。こういった地域資料は当時の暮らしや人々の考えたことなどを知る手掛かりになる。崩し字で書かれているので読むのには難儀するが、分かりやすい解説文が付いている▼資料館は毎年古文書講座を開いており、読み方を学ぶとより理解しやすくなる。マンボウとスッポンの文書は申請すれば閲覧ができる。今も昔も人は間違いを犯す。事実をゆがめるミスは笑えないが、難しい古文書にも親しみが感じられる。展示会に足を運べば、奥深さに触れる機会になる。