論説

【公立夜間中学】生徒に寄り添う学校に(12月20日)

2021/12/20 09:18

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 福島市が県内で初めての公立夜間中学を二〇二四(令和六)年度に開設する。十分に教育を受けられなかった人に手を差し伸べる大きな一歩であり、学びの機会を求める人にとって通いやすい学校ができることを願う。潜在的なニーズを掘り起こし、他の地域にも開設の動きが広がるよう期待したい。

 公立夜間中学は、戦後の混乱期で義務教育を受けられなかった人や、病気や不登校で十分に学べないまま卒業した人、母国で義務教育を修了できなかった外国籍の人らを対象とする。一般の中学と同じように週五日通学し、三年の履修で卒業できる。

 今年四月時点で、十二都府県に三十六校が設置されている。政府は二〇一七(平成二十九)年施行の教育機会確保法に基づき、今年度から五年間で各都道府県と政令指定都市に「少なくとも一校」の設置目標を掲げた。県教委は二〇一五年度に公立夜間中学設置検討委員会を設け、需要の調査や先進地視察を進めてきた。今年七月、市町村立で整備し、県が財政支援する方針を打ち出した。

 二〇一〇年の国勢調査によると、県内で小学校を卒業していない十五歳以上の未就学者は二千三百四十四人に上る。小中学校を年間三十日以上欠席している県内の不登校の児童・生徒は、二〇二〇年度の文部科学省の調査で二千二百三十五人となっている。夜間中学の入学対象となる人は相当数いそうだが、県教委は需要調査に苦労している。

 教育を受ける権利は国民に等しくあり、需要に左右されるものではない。必要とする人がたとえ少なくても、行政には学びの場を提供する責務がある。県教委の方針を受け、いち早く開設を決めた福島市の英断に拍手を送りたい。

 三年間の通学と仕事など現在の生活との両立には覚悟が必要だ。学びの欲求があっても、声に出せない人も多いのではないか。福島市をはじめ開設を目指す自治体には、時間に余裕のない人のために三年を超える履修期間の設定を検討してほしい。

 福島、いわき、南相馬、本宮の四市には自主夜間中学がある。週一回から二回ほど、生徒が希望する科目を学んでいる。公立のような卒業認定はないが、教員経験者らがボランティアで教壇に立つ。日曜日に授業をする例もあり、自主夜間中学での学びを公立の出席日数に加算できると通学しやすくなるだろう。

 決められたルールの中で、少しでも生徒に寄り添う公立夜間中学が誕生することを切に願う。(鈴木俊哉)