まさに努力でつかみ取ったチャンスだ。只見高が来春の第九十四回選抜高校野球大会の二十一世紀枠東北地区候補校に選ばれた。地元の只見町は大いに沸いている▼冬は積雪三メートルにもなる国内有数の豪雪地帯である。毎年十二月から三月いっぱいはグラウンドでの練習がほぼできない。その代わり、決して大きくはない体育館の中で室内用ボールを使ったノックを受ける。自転車での通学が禁止となるため空になった駐輪場ではティーバッティングに汗を流す▼部員が手をつなぎ一列になって、グラウンドの雪をかき分けて往復する練習もある。腰までの高さが限界だそうだが、下半身の強化につながっている。そんな野球への情熱が抜群のチームワークと自信、粘り強さを育んだのだろう。秋の大会で逆転劇を重ね、八強入りを果たす原動力となった▼端からみれば、環境面でのハンディは大きい。「でも、これが僕たちには当たり前です」。主将の言葉が頼もしい。「運命の日」は来月二十八日。甲子園出場なら、会津勢では一九五九(昭和三十四)年の会津高以来となる。ただ、結果がどうあろうと、選手たちの努力の尊さは揺るがない。吉報を信じて待とう。