戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第1部・帰還困難区域(5) 成木まで50年以上 入山も管理もできず

2021/12/27 14:41

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浪江町津島地区赤宇木に群生する津島松。白坂さんはかつて育成や管理を担当していた
浪江町津島地区赤宇木に群生する津島松。白坂さんはかつて育成や管理を担当していた

 良質な木材として知られる「津島松」は、浪江町津島地区赤宇木(あこうぎ)を中心に生育している。植え付けから成木になるまで五十年以上かかり、守り育てるには下草刈りや間伐など地道な作業が必要だった。

 東京電力福島第一原発事故発生前、磐城森林管理署が育成や管理を担当していた。作業員は班を組み、津島松が分布している地域を分担した。春先に苗木を植栽する。七月から九月にかけて、雑草を取り除く下草刈りやツル切り、冬の間は生育を妨げる周辺の雑木などを除去する除伐に取り組んだ。

 夏場は炎天下の中で熱中症にならないよう適度に休みながら作業した。雪が積もる冬場はかんじきを履き、防寒着などで寒さをしのいだ。

 津島松は日当たりがいい場所を好むため、周囲の木々を間引く間伐も重要となる。木々の成長を促すため、通年で作業していた。この他、低木などを刈り払った後に整地する地ごしらえなどに取り組んだ。

 地元の林業事業者は主に樹齢五十年以上で出荷に適した伐期を迎えた木を伐採していた。原木は町内の貯木場や各地の市場に運ばれた。県内外から製材業者や加工業者らが買い付けに訪れていた。

 こうして半世紀以上もの間、丹精込めて育てるからこそ高級建築資材として重宝されてきたが、今は原発事故による高い放射線が障害となり、山に入れない期間は十年九カ月余りに上っている。現在は管理ができない状態に陥っている。このままの状況が続けば、優良な木が育ちにくくなる。マツクイムシの被害も予想され、荒廃が進む懸念がある。

 津島地区の一部は帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)になっている。国が除染などを進め、二〇二三(令和五)年春までの避難指示解除を目指しているが、除染は居住地のみで山は手つかずだ。拠点外の赤宇木は帰還の見通しすら立っていない。福島森林管理署臨時作業員白坂治義さん(74)=福島市=は、旧浪江営林署(現磐城森林管理署)職員時代に津島松の育成・管理を担当した。「木も私たちも年齢を重ねている。手入れされた山をもう一度この目で見たい」と願う。

 かつて活況を呈した林業を支えてきた津島松。再び山に手をかけられる日は今も見通せない。