丑[うし]年は残りわずかとなり、寅[とら]年が迫ってきた。干支[えと]にちなんだ昔話では、神様が元旦にやってきた順に交代で一年の大将を務めてもらうとお触れを出す。前日の夜から向かったウシに次いで到着したのは、当日の朝に出発した俊足のトラだった▼自然界のトラは有能なハンターとして知られる。同じ肉食獣のライオンやオオカミが群れで獲物を仕留めるのに対して、トラは単独で狩りをする。生息する地域では古くから人々に恐れられると同時に、森に君臨する孤高の存在として敬意を払われる▼一方で毛皮や骨を狙う人間に狩られ、自然破壊によってすみかを奪われてきた。国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に認定され、各国は保護活動に力を入れる。アムールトラがすむロシアでは、最悪だった時期の三倍の約六百頭まで回復したという。トラにとって明るい未来がのぞく▼干支の発祥となる中国の古い思想によると、来年の寅年は厳しい冬を越えて芽吹き始め、新しい成長の礎となる-との意味合いがあるとされる。昨年に続き今年も新型コロナウイルスという試練に耐えた。人間にとっても希望が持てる一年になるよう願わずにいられない。