戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第2部・林業(9) 人足りず荒廃懸念 「将来不安しかない」

2022/01/04 10:05

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矢祭町の荒廃した森林を眺める金川さん。細く枯れた木々が密生し、晴れていても光がほとんど差し込まない
矢祭町の荒廃した森林を眺める金川さん。細く枯れた木々が密生し、晴れていても光がほとんど差し込まない

 矢祭町の中心部西側にある森林地帯には杉林などが広がる。細く枯れた木々が密生し、晴れていても光はほとんど差し込まない。力尽きた木々がそこかしこに横たわる。山を守り、育てる林業の従事者が減り、森林の整備が行き届いていない。

 東白川郡はスギやヒノキなどの原木の生産が県内でも盛んな地域だ。郡内の四町村の二〇一八(平成三十)年の素材生産量は約十六万六千立方メートルで、中通り二十九市町村の三分の一余りを占める。

 東白川郡森林組合は、組合員である森林所有者から依頼を受け、伐採や森林整備を手掛けている。

 参事の金川喜久さん(65)=塙町=は、年々荒れていく森を見つめる。この地域の平均放射線量は毎時〇・五〇マイクロシーベルト以下で原木の伐採や搬出が可能だが、除染は行われていない。

 林業に就く人は時代とともに少なくなる傾向があった。東京電力福島第一原発事故が担い手減少に拍車を掛けたと感じている。この十年間で組合が新たに雇用したのはわずか六人。うち二人はその後離職してしまった。人手不足は深刻化し、「誇りだった地元の山はどうなってしまうのだろう」と将来を心配する。

 県全体を見ても担い手不足の傾向が続いている。県によると、二〇二〇(令和二)年の新規林業就業者は七十八人で、二〇一〇年の二百四十二人の三分の一以下にとどまる。

 組合は郡内外の高校に赴き、進路指導を担当する教職員に林業の魅力をアピールし、ハローワークを通じて求人を出している。それでも就業希望者は思うように集まらない。

 二〇二三年春、塙町の塙工高は白河市の白河実高と統合し廃校となる。少子化が進んでいる上、地元の学校が減ることで、林業関係者には担い手の確保がさらに難しくなるとの懸念が広がる。

 組合の従事者十三人の平均年齢は五十代半ば。造林や植栽の担当者は全員が六十代以上だ。技術を伝える相手がいなければ、世代交代は進まない。

 山の除染は県全体でも一部地域でしか実施されていない。金川さんは「現状でさえ山を守る人手が足りず、荒廃が進んでいる。十年先や二十年先を考えると不安しかない」と嘆く。

 人手不足は森林整備に影響を与えている。整備が滞れば土砂災害の発生リスクが高まる。