戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第2部・林業(12) 再生の循環に影響 萌芽率が下がる恐れ

2022/01/08 12:27

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かつてシイタケの原木を生産していた山林。シイタケ原木としての伐期を逃し、育ち過ぎた木が積み上がっている
かつてシイタケの原木を生産していた山林。シイタケ原木としての伐期を逃し、育ち過ぎた木が積み上がっている

 田村市都路地区はシイタケ栽培用の原木の産地として知られていた。しかし、東京電力福島第一原発事故で状況は暗転した。原木に含まれる放射性物質の数値は下がり切らず、出荷停止が続いている。適切な時期に伐採できないことで、森林の循環にも影響を与えている。

 山林は対象面積が大きいなどの理由で除染は難しく、放射性物質は地表にとどまり続けている。除染はほとんど行われていない。

 原木生産などで伐採されるコナラやクヌギなどは、残された根株から新たな芽が出て再生する「萌芽(ほうが)更新」と呼ばれるサイクルを持っている。林業関係者は伐採した後に芽が育ち、成長するのを待って再び切り出す。

 シイタケ栽培用の原木は直径十~十五センチに成長したものが適しているとされる。原発事故発生前は萌芽更新を待ち、二十~二十五年のペースで伐採していた。だが出荷停止で伐採が遅れ、育ち過ぎた木が目立つようになった。樹齢三十年以上のコナラは新たな芽が出る萌芽率が下がるとも言われている。

 都路地区では、最盛期には九十万本以上の原木が生産されていた。ふくしま中央森林組合都路事業所によると、昭和二十年ごろまでは、燃料に使うまきや炭焼き用として木材を出荷していた。燃料が石油などに代わると需要が減少し、昭和二十~三十年代ごろ、商社が林業関係者にシイタケ栽培用の原木を生産するよう持ち掛けたという。以来、全国有数の産地として知られるようになった。

 多くの林業関係者の生活を支えてきた原木生産の再開は見通せていない。同組合都路事業所長の渡辺和雄さん(59)は「原木を出荷できるようになるまで何年かかるか分からない。その時、都路の原木の需要はないかもしれない。答えのない課題と向き合い続けなければならない」と唇をかんだ。

 原木の出荷が止まっていることで、シイタケ農家も休業状態に追い込まれている。