論説

【あんぽ柿百年】産地活性化の好機に(1月20日)

2022/01/20 09:03

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 県北地方の特産品として親しまれている「あんぽ柿」は二〇二二(令和四)年度、誕生から百年を迎える。伊達市梁川町五十沢地区が発祥の地だ。一九二三(大正十二)年十一月に「五十沢枯露[ころ]柿出荷組合」が発足し、共同販売が始まった。二二年度は東京電力福島第一原発事故の影響による二年間の加工自粛を乗り越えて加工を再開してから十年目でもある。節目の年を産地活性化の好機としたい。

 JAふくしま未来は、あんぽ柿の地理的表示(GI)保護制度への登録申請を進めている。伝統的な生産方法や産地の気候・風土・土壌などの特性が、品質や評価の高さと結び付いている農林水産物を知的財産として国が保護する制度だ。認可されれば「南郷トマト」(南会津町)に次いで県内二品目となり、ブランド力の強化につながる。

 JAなどは十二月上旬に記念式典を計画している。記念誌発行や新たなポスター・パンフレットの作製などを通してPRの強化を図るほか、県などと連携して海外への販路拡大を目指す。

 今月末には冷凍したあんぽ柿がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに初めて輸出される。震災後ではタイ、マレーシア、シンガポールに次いで四カ国目となる。県によると、現地のレストランでの提供、日系スーパーでの試食販売、食品見本市への出品が予定されている。

 中東ではドライフルーツを食べる習慣がある。県は一九年度からドバイ輸出に向けた市場調査を行い、品質確保や輸送方法、販売先の確保を進めてきた。県の担当者は「世界中から人や物が集まるドバイで認められれば、全世界にあんぽ柿が広がる」と話し、あんぽ柿をきっかけに、他の県産食品の輸出拡大につなげたい考えだ。

 県内や国内での消費拡大には、あんぽ柿を使用する飲食店などを増やす必要がある。さまざまな料理や菓子が考案されているが、定着しているとはいえない。例えば、「あんぽ柿の日」を設け、居酒屋などの協力店でお通しに使ってもらえば、男女を問わず幅広い世代の新たな顧客獲得につながるだろう。

 あんぽ柿は今なお、原発事故の影響が残る。同JAによると、生産量は徐々に回復しているが、まだ、事故前の八割程度という。約八百五十人いた出荷者は約六百五十人減少し、高齢化や後継者不足の解消に向けた対策も急務だ。一世紀に及ぶ地域の産業を次の世代に引き継ぐためにも、官民が一体となった取り組みが求められる。(湯田輝彦)