看護職員の処遇改善(2月13日)

2022/02/13 09:00

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 コロナ禍を機に、医療提供体制の脆[ぜい]弱[じゃく]な部分が社会的にも認知されるようになったが、大本となる原因を是正しなくては、同じ危機を繰り返すことになる。平時からの十分な体制・人員配置があってこそ、有事でも的確に対応できる体制が確保できる。安心・安全な医療提供体制は、病院等に勤務する各領域の医療従事者の専門的知識及び技術に支えられており、看護職員もその一翼を担う。

 昨年、岸田文雄首相は、看護職員等は仕事内容に比して賃金の水準が長く抑えられてきたとし、収入増を図る方針を示した。そして、公的価格評価検討委員会「中間整理」に、「今般の経済対策を踏まえ、まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員について、収入を3%程度引き上げていくべきである」と明記された。既に令和三年度補正予算で二〇二二年二~九月の1%程度の引き上げは国からの補助金として措置されている。十月以降は3%程度の引き上げを行うとし、同時に「中間整理」では、「看護師の処遇改善に関して、今回の処遇改善の取り組みが確実に賃上げにつながることを担保することを、令和四年度診療報酬改定の中で検討すべき」とされた。

 これを受け、政府は、令和四年度の診療報酬本体の改定率をプラス0・43%、うち、「看護の処遇改善のための特例的な対応」としてプラス0・20%とすることを決定した。その内容は、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数が年間二百台以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、十月以降収入を3%程度(月額平均一万二千円相当)引き上げる処遇改善の仕組みを創設し、確実に賃金に反映されるよう適切な担保措置を講じるというものである。

 さらに、「中間整理」においては、本会が主張してきた「管理的立場にある看護師の賃金が相対的に低いこと」にも触れ、看護職員のキャリアアップに伴う処遇改善のあり方について検討すべきと言及している。また、「キャリアアップの観点からは、ライフステージに対応した働き方により継続的に就労できることが重要」であり、「勤務環境の改善に積極的に取り組むべきである」と記された。

 来るべき将来を見据え、質の高い医療提供体制を持続可能なものとしていくためには、看護職員の知識・技術が適正に評価され、役割、業務内容に見合う賃金が保証されていることが極めて重要である。今回、看護職員のキャリアアップに伴う処遇改善にまで言及されたことで、看護職員のいわゆる「頭打ちの賃金カーブ」改善が期待できる。本会は、看護職員の賃金水準、賃金体系を改善し、すべての看護職員を対象に十分な収入増を実現する恒久的な措置の導入に向けて引き続き取り組む。

 看護職員がやりがいをもってキャリアを継続できるよう、本会の目的の一つでもある「看護職員が安心して働き続けられる環境づくり」を推進し、看護職能団体として積極的な働きかけを継続する。(福井トシ子 日本看護協会会長、大玉村出身)